『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第95弾~

2024年5月9日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 95回目の放送です。

今回の放送のテーマは『肥満と心臓病』についてです。

吉田早苗さん:私のすぐ近くにも非常にこのタイトルが気になる方が見えますけど…

 

本地洋一さん:私はこれからどうなるのでしょうか? 松尾先生教えてください!

 

『まずは、脂肪のお話しです』

松尾仁司院長:まずは原点に戻って脂肪のお話からしましょうか。リスナーの中にもお腹が気になる方がいらっしゃるのではないでしょうか?

お二人はなぜ脂肪があるのか考えたことはありますか?

脂肪は、食事で体内に取り込んだカロリーを貯蔵する働きをしています。この働きがあるため人類は飢餓に直面した際に脂肪からエネルギーを取り出して命を長らえることが出来たわけです。

現代の日本人にとってはお腹周りの脂肪はあまり必要とされていないというか、むしろなくしたいと思っておられる方が多い脂肪が、実は人類の歴史から見ると必要不可欠な存在でもあったわけです。

脂肪(体脂肪)は皮下脂肪と内臓脂肪の2つのタイプに分類することが出来、それぞれ違った性質を持っています。

皮下脂肪はお腹をつまむとわかる脂肪で腰回り、おしり、ふとももなど皮膚のすぐ下に溜まる性質があります。一方で内臓脂肪はお腹の中の臓器、腸の回りの腸間膜につく脂肪なので体の表面からはわかりにくいのですが、いわゆるポッコリお腹の方は内臓脂肪が多くついていると言われています。

またこの二つの脂肪はその合成と分解の性質にも違いがあります。

皮下脂肪は脂肪の合成と分解に時間がかかるため内臓脂肪に比べ、つきにくく、取れにくい脂肪と言えます。預金にたとえると定期預金ですね!

一方で内臓脂肪はその合成と分解が皮下脂肪に比べてさかんに行われるため、摂取した栄養に余分があれば溜まりやすい脂肪と言えます。

お金にたとえると、お財布の中のお金で出し入れが容易であると言えるかもしれません。

皮下脂肪型の肥満は内臓脂肪型の肥満に比べて、心血管疾患のリスクは低いと言われています。しかしながら皮下脂肪がすごく多いにもかかわらず内臓脂肪が全くないなどという方は多くありません。定期預金(皮下脂肪)がたくさんある人はやはりお財布の中にもたくさんお金(内臓脂肪)があると考えていいのではないでしょうか!

 

『皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満』

一般的に肥満とは脂肪が身体につきすぎた状態のことを言います。さきほど体脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪の2つのタイプがあるといいましたが、肥満も皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型があります。

皮下脂肪型の肥満は女性に多く見られ、体型的には下半身に脂肪がついた洋ナシ型になりがちです。一方で内臓脂肪型肥満は男性に多くみられ、体型はポッコリお腹のりんご型体型になりがちです。内臓脂肪は血液中の脂質と密接に関係してきます。つまり、内臓脂肪が増えると血液中の中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減るということになります。

つまり、内臓脂肪が多い方は脂質異常をきたしやすいため、動脈硬化を起こしやすく、狭心症や心筋梗塞、急性大動脈解離などの心血管疾患や脳卒中の命に関わる恐ろしい病気になりやすいと言われています。

『BMI(ボディマス指数)とは』

BMI(Body Mass Index)はボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。子供には別の指数が存在しますが、成人ではBMIが国際的な指標として用いられています。健康を維持するためは日頃からBMIを把握することが重要です。

• BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

• 適正体重 = (身長m)2 ×22

吉田早苗さん: 最近では、このBMIや体脂肪率、筋肉量などが計測できる体重計も売っていて使われている方も増えてきていますよね!

 

『BMIの値が25以上を肥満といいます』

日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、なかでもBMIが22になるときの体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態であるとされています。

BMI25以上は「肥満」と定義されていて、肥満はその度合いによってさらに「肥満1」から「肥満4」に分類されます。

 

本地洋一さん:近年メタボリック症候群という単語をよく耳にしますが、肥満とメタボリック症候群の違いを教えてください。

 

『メタボリック症候群とは内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさった状態をいいます』

松尾仁司院長:厚生労働省のホームページを見ますと、『メタボリック症候群』の診断基準は

ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリック症候群」と診断されます“とあります。

メタボリックシンドロームの診断基準 *厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより抜粋

 

『メタボリック症候群』は厳密には病気ではありませんが、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化のリスクを高めることが分かっています。

本地洋一さん:私もよく吉田さんにメタボ体型だといわれることがあるのですが、実際メタボリック症候群の方は世の中にどのくらいおみえになるのでしょうか?

松尾仁司院長:健康診断では身長、体重、腹囲、血圧を測定し、さらに採血でコレステロール値や血糖値などをチェックしています。これはメタボリック症候群の有無をチェックしているわけです。

これによると、メタボ予備群(腹囲が85cm以上あり高脂血、高血圧、高血糖のうち1つが該当)とメタボリック症候群((腹囲が85cm以上あり高脂血、高血圧、高血糖のうち2つ以上該当)を合わせると日本の成人男性では約45%が該当することが分かっています。女性の場合は男性に比べるとその割合は低く15%から16%の成人女性がメタボ予備群かメタボリック症候群と言われています。

本地洋一さん:驚きました。性別でそんなに差があるのですね。それから見ると男性より女性のほうが健康で長生きするというのが良くわかりますね。

松尾仁司院長:岐阜ハートセンターは循環器の専門病院で、心臓の病気の患者様を治療しています。その中で心筋梗塞の発症率も男性が80%以上ということが分かっています。

 

『死の四重奏』

先ほど、内臓肥満に加えて高血圧、糖尿病、脂質代謝異常のうち2つが合わさった状態をメタボリック症候群と定義されると言いましたが、これら4つの条件(内臓肥満+高血圧+糖尿病+高脂血症)全て揃った状態を死の四重奏と言い、心筋梗塞などの心臓病で死亡する確率が30倍高くなることが知られています。

本地洋一さん:『死の四重奏』とはは恐ろしいですね。『メタボリック症候群』はその一歩手前ということですか!『メタボリック症候群』は病気ではないということですが、放置しておくと恐ろしい病気にかかる可能性が極めて高い状態ということが分かりました。

これまでも、先生に様々な循環器疾患のお話をしていただいたのですが、共通していることは循環器疾患の予防、再発防止や進行を食い止めるには生活習慣の改善が大切であるということですよね!

松尾仁司院長:おっしゃるとおりで、病気の中には癌のように遺伝的要素が強い病気と生活習慣と密接な関係がある『メタボリック症候群』によって引き起こされる動脈硬化を原因とするような病気があります。もちろん近年では大変良い薬が出てきていますので、お薬で血圧や血糖、コレステロールの値をコントロールすることが出来るようになってきています。

しかしながら、長く健康な生活を続けるためには生活習慣を改善することを強くお勧めいたします。

本地洋一さん:私もメタボ体型で、努力はしているのですがどうしても長続きせずにリバウンドを繰り返してしまいます。先生は多くの患者さんを診られていると思いますが、『メタボリック症候群』の方に対するアドバイスをお願いします。

松尾仁司院長:『メタボリック症候群』特に『肥満』は生活習慣を改善することが非常に重要です。主に食習慣の改善と運動習慣の継続、それと禁煙です。

近年、喫煙率は徐々に低下してきていますが、『メタボリック症候群』に該当する方で喫煙習慣がある方は脳卒中や心筋梗塞の発生率がさらに上がってしまうことが知られています。

これらのメタボ対策につきましては、次回詳しくお話ししたいと思います。

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。

次回のハート相談所は2024年5月23日(木)14:30からの放送になります。