025年7月24日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 の放送です。
今回の放送のテーマは『熱中症について』です。
松尾仁司院長:今本当に暑い日が続いており、ニュースでも熱中症熱中症という言葉がよく出てくると思いますが、本地さん、熱中症はどんな病気かわかりますか?
本地洋一さん:体温のコントロールができなくなる、水分不足ということから色々な症状が出てくるということでしょうか?
松尾仁司院長:そうですね。人間って恒温動物にあたりますよね。恒温というのは体温が一定に調整されているということです。例えば暑いところへ行っても、例えば気温が40度であったとしても、体温は基本的には37度でコントロールされます。なぜ37度にできるかというと、体内に溜まった熱を外に放出することによって体温を一定にコントロールできる、これが恒温動物である人間の体の中で起こっていることになります。
ところが熱中症というのは、体温の調節機構がうまく働かなくなり、体から熱を放出することができなくなり、熱がこもってしまうことで色々な症状が出ることを熱中症といいます。

また、よく使われる言葉で脱水症があります。脱水症というのは、熱がなくても水分を摂らなければ起こります。脱水症が引き金で熱中症になる場合はありますし、熱中症になってしまったために、物が飲めない食べれないなど水分が摂れなくて脱水症になるなど、2つの言葉は絡み合って似ている症状がありますが、必ずしも同一語にはならないということです。
どうして熱中症になるかと言うと、例えば気温の高いところで長時間仕事したりとか最近は熱帯夜の状況が続いていますが、夜間クーラーをつけないで寝ているだとか、そういったことで、熱中症の引き金になったりするので、注意が必要です。
そして、熱中症にならないためには、こまめに水分を取りましょうという言い方をすると思いますが、高温環境にいると体から汗などで水分はいっぱい出ていきます。だから水分不足になってしまう可能性が高いということで、水分をこまめに取ることが熱中症予防には、
大変重要なことと言われています。では実際に、人間の身体から毎日どのくらいの水分が出ていくかわかりますか?
1日に体から出ていく水分は2.5Lと言われています。尿で1500ml、便から100ml、皮膚・呼気からの水分喪失が900mlとなります。夏場はそれ以外に汗で水分を失うことになります。例えば、4時間座っているだけで約200ml、8時間寝ているだけで500mlの水分損失があります。また、1時間の通勤で200ml、7-10分間の入浴で400mlの水分損失があると言われています。
夏の炎天下では10分歩くと約100mlの汗をかくそうです。夏の室内で活動すると1日の汗の量は約3000mlとなり、高温環境の工場などでの閉鎖空間の作業では8時間働くと約12Lも汗をかくそうです。激しいスポーツや汗をかく仕事をしている人にとっては水分補給がいかに大切かを示しています。
そういったことを考えると、先ほど話したように何もしてなくても水分は体の外に出ていくので、それをきっちりきっちり補充してあげるということが、大変重要なことになります。

本地洋一さん:なるほど。水分補給をすることで、脱水症も防ぐこともできることに繋がりますね。ただ先生、喉が渇いてないとか、水が欲しいと思わないとか、自覚症状が乏しい人もいると思います。
吉田早苗さん:暑さもあまり感じないとかね。暑いけれども年を重ねると感じなくなりつつありますよね(笑)。
松尾仁司院長:そうですね(笑)。年を重ねてくると口渇感というのは感じにくくなると言われています。なので、脱水症あるいは熱中症というのは、お年寄りの方になりやすいとも言われています。なので、喉が渇いたから水分を飲むのではなく、特に夏場などは定期的に水分補給をする必要があります。
定期的とは、①起床時、②朝食時、③10時頃、④昼食時、⑤15時頃、⑥夕食時、⑦入浴前後、⑧就寝前、これらのタイミングにそれぞれ150ml~200mlの水分補給を行うことが勧められています。これだけ摂っても1日(150ml~200ml)×8回=1200ml~1600mlです。
ただし、心臓や腎臓が悪いと言われている方は、体の水分調節がうまくできなくなることもありますので、主治医の先生に1日に飲んでいい水分量を確認する必要があります。
それ以外の元気なにとっては、水分をたくさん摂ったからといって、体の水分調節ができないなんてことはないので、夏はとにかく水分を細目に摂りましょうということになります。
本地洋一さん:水分は大切ということは、今のお話で分かりましたが、もし水分を摂らなかった場合、循環器疾患など色々な病気に繋がってしまうと思いますがいかがですか?
松尾仁司院長:そうですね。体内より1%水分不足になると“のどの渇き”、2%喪失で“めまい、吐き気、食欲減退”などの症状が現れます。そして、10%の喪失で“筋肉の痙攣、失神”、20%喪失で“命の危機”になると言われています。
そのような水分喪失で生じる症状の他に、体内の水分量が低下することにより、生じるもう一つの困ったことは水分不足から血液がドロドロになって血栓ができやすい状態になることです。血栓が生じることによって引き起こされる病気に、心筋梗塞や脳梗塞、下肢静脈血栓症、肺塞栓症など命に関わるような病気につながることがあります。
これらの病気は冬に多いと考えておられる方も多いと思いますが、夏の気温が高い時に発生する頻度が多くなることも報告されています。脳梗塞を発症した人の死亡率は気温32度を超える日は死亡率が1.66倍になるとも報告されています。
なので、先ほども言いましたが、何よりも重要な点はこまめな水分補給を行うということです。

本地洋一さん:日常的に水分を補給するということが、非常に暑い時は大切になりますよということですね。
松尾仁司院長:はい。水って本当に重要で、人間は「水なし」で何日生きられるかというと、一般的には3~5日程度と言われています。逆に「水のみ」、水さえあれば30~60日程度生存可能と言われています。ですから、体内から水分がなくなるということは大変なことになりますし、生きていく上で、この暑い夏を元気に乗り切る一つの重要なポイントになります。
吉田早苗さん:先生、水分補給というのは水しか駄目ですか?
松尾仁司院長:熱中症対策で、よく塩分補給をしなさいとも言われています。汗の成分は99%が水で0.05%が塩分といわれており、1000mlの汗をかくと約3gの塩分が体外に出てしまいます。なので、お塩をたくさん舐めなさいというわけではなく、最近では色んな電解質が入った飲み物がありますので、汗をたくさんかくような場面では、スポーツドリンクなどの電解質が補正される飲み物を飲んだ方がいいと思います。
吉田早苗さん:あと、暑いとビールも飲みたくなりますが、アルコールは駄目ですよね?暑い日のビールっておいしいですよね?
松尾仁司院長:ビールおいしいですよね!喉越しが爽やかでおいしいと思いますが、ビールなどのアルコールも水分ですが、同時に利尿作用があります。したがって、水分としてビールを飲んでも、尿がたくさん出てしまって、かえって体から水分を失い脱水気味になってしまうのでお勧めはできません。

吉田早苗さん:そうですよね。アルコールを飲み過ぎると逆に水分が出過ぎちゃうということですね。気を付けなきゃいけないですね。とにかく水分というのは大切ですよということですね。本日もありがとうございました。
次回のハート相談所は2025年8月21日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。