『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第104弾~
2024年9月26日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年17回目の放送です。
本地洋一さん: 今日のテーマは『狭心症』 について松尾先生にお話しを伺いたいと思います。
松尾仁司院長: 『狭心症』 という病名は、心臓病の中でも心筋梗塞とともに比較的良く耳にする病気ですよね!
心臓という臓器は、24時間365日ずっと休むことなく全身に血液を送り出し続けるポンプの働きをしています。そのためには、心臓の筋肉自体にも酸素が必要となります。
『狭心症』は、心臓に十分な血液が届かないために、胸が痛くなる病気です。心臓を動かすためには酸素が必要で、その酸素は血液によって運ばれます。でも、心臓に血を送る道(冠動脈)が狭くなってしまうと、酸素が足りなくなり、胸が締め付けられるような痛みを感じます。
本地洋一さん: 狭心症の症状の特徴を教えてください。
松尾仁司院長: 典型的な『狭心症』の症状は、安静にしている時は無症状で、階段や坂道を上ったり、運動をした際に、胸の締め付け感や圧迫感といった不快感としてあらわれます。つまり身体が安静時よりたくさんの血液を必要とした際は、心臓は心拍数や血圧を上げてより多くの仕事をすることになりますので、心臓自体も多くの酸素が必要になります。
しかしながら、心臓を栄養している冠動脈に狭窄があると心臓に十分な酸素が行き渡らないので心臓が酸素不足になり胸部症状が出現します。
山登りの際に5合目にあるお地蔵さんのところまでくると必ず胸が苦しくなるので、そこでしばらく休んで、お地蔵さんにお祈りしていると胸の症状がスーッと治まるといった状況はお地蔵さんの祟りではなく、典型的な労作性狭心症の症状の可能性があります。
労作性狭心症の場合は、労作を中断して休むことにより胸の症状が治まりますので、大したことがないと思われる方もお見えになりますが、実は冠動脈に動脈硬化による狭窄がり、冠動脈の血流が悪くなっている可能性があります。
また、狭心症は発作の起きる状態により
1. 安定狭心症
2. 不安定狭心症
に分類されます。特に不安定狭心症は新たにおきた狭心症や発作の頻度・持続時間が変化してきたもの(頻度も増え、1回の発作の持続時間も長くなった状態)をいい、急性心筋梗塞に移行する危険性が高いことから、入院治療が必要となります。
本地洋一さん: 『狭心症』と心筋梗塞はいずれも冠動脈の動脈硬化が原因で起こると認識していますが、その違いを教えてください。
松尾仁司院長: 心筋梗塞と狭心症の違いは、『狭心症』の場合には通常心臓の筋肉の障害がないか、あるいはあっても少ないわけですが、心筋梗塞では確実に心臓の筋肉が障害(壊死と言います)されます。急激な筋障害が起こりますと、心室細動や心室頻拍といった重篤な不整脈が高い頻度で起こってきます。そしてこの悪性の不整脈がしばしば心筋梗塞の発症早期に命を落とす原因となるのです。
本地洋一さん: 『狭心症』の治療について教えてください。
松尾仁司院長: 『狭心症』、心筋梗塞といった虚血性心疾患の治療としては、
1. 薬物治療
2. カテーテル治療
3. 冠動脈バイパス手術
があります。
冠動脈造影で冠動脈の狭窄が明らかになればその程度によって治療法を選択していきます。
一般的に薬物療法(抗血小板剤、ニトロ製剤、β遮断薬など)は冠動脈の1本だけに問題があり、薬での治療で症状が緩和し、虚血も改善する場合に選択されます。一方、複数の枝で狭窄が認められたり、1本だけの狭窄であってもその血管の養っている心筋の領域が大きい場合や、冠動脈の狭窄が高度もしくは閉塞していて心筋の虚血が誘発されている場合にはカテーテル治療もくしは冠動脈バイパス術が必要となります。
カテーテル治療は経皮的冠動脈形成術(PercutaneousTransluminalCoronary Angioplasty: PTCAもしくはPercutaneousCoronary Intervention:PCI)といいます。具体的な治療方法としては、風船により狭窄部を拡げる方法・網目状の金属(ステント)を狭窄部に留置する方法、高速回転するドリル(ロータブレーターやダイアモンドバック)で石灰化の強い硬い血管を削る方法などがあります。
風船治療(POBA:PrimaryOld Balloon Angioplasty)
POBAに使用する風船の内部は造影剤で満たされています。体外からインデフレーターという圧力計のついた注射器で圧をかけて風船をふくらませます。硬い石灰化病変やステントを拡げたりする必要もあるので、風船自体は20気圧程度の高圧に耐えれるようにできています。また、風船は様々なサイズ・長さがあり、治療する病変に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。
本地洋一さん: 少し運動すると胸が苦しくなるけれど、休めばすぐに良くなるから大丈夫と軽く考えずにまずは専門のお医者さんに正しく診断していただくことが大切だということですね。
松尾仁司院長: 以前は冠動脈疾患の診断はカテーテル検査がゴールデンスタンダードといわれていたため、入院して検査をする必要がありました。心臓の検査というと敷居が高いといわれる方も多いですが、現在は技術の進歩で冠動脈造影CT検査などは入院の必要もなく、外来でより低侵襲に冠動脈疾患の診断が出来ます。
吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2024年10月10日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。