『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第84弾~

2023年11月30日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第84回目の放送です。

今回の放送のテーマは『息切れ』です。

本地洋一さん: 『息切れ』と言いますと、私などは走った後にハーハーしながら『あーエラ!!』なんてことはよくあります。

吉田早苗さん: 確かに激しい運動をすると誰にでも『息切れ』って起こりますよね!

松尾院長: 岐阜ハートセンターの外来を受診される患者様の訴えで非常に多い症状は『動悸と息切れ』です。前回の放送では動悸のお話をしましたが、本日は『息切れ』につてお話します。

『息切れ』を感じたことがない人などいません。ほかにも「息が苦しい」「呼吸が苦しい」「呼吸がしづらい」「息が詰まる」など人によって様々な言い方があります。

医学用語では、これらの主観的症状をまとめて『呼吸困難』と呼んでいます。

息切れとは組織の酸素不足のことです。

皆さんご存じだと思いますが、人が生きていくためには、全身の組織に充分な酸素と栄養が行き渡る必要があります。呼吸で体内に取り込まれが空気中の酸素は肺で血液に取り込まれ、食事で摂取した栄養は内臓で消化吸収され血液に取り込まれます。

この酸素と栄養は血液によって全身の組織に運ばれ、脳や内臓、筋肉、骨、皮膚などの組織に取り込まれ、エネルギーとして活用されます。

その結果組織では二酸化炭素や老廃物が発生します。これらの老廃物も血液を通じて最終的に体の外に排泄されます。

走ったり、山登りをしたときに感じる息切れは、運動によって筋肉が沢山の酸素を消費することによって一時的な酸素不足に陥ったサインと言えます。この一時的な酸素不足は休憩することによって徐々に解消されるため、しばらくすると『息切れ』は治まります。

また、健康な方でも年齢を重ねると手足の筋肉が徐々に衰えてきますので若いころに比べると身体能力が徐々に低下してきます。このため、同じ強度の運動をしても若いころのようには行かずに『息切れ』を自覚するようになります。

一方で肺や心臓の病気が原因で起こる場合もあります。

本地洋一さん: つまり、健常者でも激しい運動をした場合におこる『息切れ』と病気が原因で感じる『息切れ』があるということですね!

病気が原因の『息切れ』

松尾院長: 最近テレビで『最近息切れを感じませんか?それはもしかしたら心臓弁膜症が原因かもしれません!』というようなCMが流れているのをご存じでしょうか?

このCMには心臓が悪い方は『息切れ』を起こす可能性がありますよというメッセージが込められています。

1. 心臓は、血液を全身に送り出すポンプです。虚血性心臓病、心臓弁膜症、心筋症などの心臓病により、心臓の働きが低下するということは、ポンプが機能不全を起こすということで、全身の組織に充分な酸素と栄養が届かなくなり、組織が酸素不足になることがあります。

心臓の他にも肺に病気があったり、貧血があったりしても『息切れ』を起こす可能性があります。

2. 肺という臓器は、空気中から酸素を血液中に取り込み、全身の臓器から戻ってきた二酸化炭素を息を吐くことによって排出する役割を持っています。心臓は肺で酸素化された血液を全身に送り出すポンプの役割を担っています。

したがって、長年の喫煙が原因で起こる慢性閉塞性肺疾患、肺癌などの肺の病気も『息切れ』原因となります。

3. 心臓病や肺の病気の他に、貧血も『息切れ』を起こす可能性があります。貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態のことです。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ重要なはたらきをしているため、その量が少なくなると運べる酸素の量も少なくなって全身が酸欠状態となります。

本地洋一さん:なるほど心臓や肺に病気がある場合に『息切れ』という症状が現れる場合が多いということですね。また心臓や肺の病気以外にも貧血が原因でも『息切れ』は起こるということですか。

それでは、病院を受診する必要がある『息切れ』とはどのような『息切れ』なのでしょうか?

松尾院長: 大変良い質問ですね! リスナーの皆様も『息切れ』を感じたことのない方はお見えにならないと思います。では、心臓や肺の病気が原因の息切れとはどのようなものかとかと言いますと、

今まで出来ていたことが息がきれて出来なくなってしまった。たとえば散歩中に、少し前までは一気に登れた坂道が、途中で休まないと登れなくなってきた方は要注意かもしれません。夜間に『息切れ』で目が覚めたりするような方は、なるべく早く病院で診察を受けたほうが良いと思います。

本地洋一さん: 心臓や肺の病気を診てもらうのは恐ろしい気もしますが、考え方によっては『息切れ』という症状は恐ろしい病気を知らせるサインともいえるため、何故が『息切れ』起こるのかをきちんと把握することが大切だということですね!

 

普段と違う『息切れ』を感じたら専門医で診察を受けてください。

松尾院長: 今までの放送で運動の大切さを繰り返しお伝えしてきました。

お年を召すことによって足腰の筋肉が衰えてきた方は、積極的に運動することによって活動性を維持できるだけでなく恐ろしい病気の予防にもつながります。

また、ご自分のご家族が最近肩で息をするようになってきたであるとか、横になると息が苦しそうに見えるなど周囲が気づく場合もあると思います。

ご本人は歳のせいだと思っていることもしばしばありますのでご家族が気づいてあげて受診したいただくことが、恐ろしい病気を手遅れになる前に治療するためには重要と言えます。

吉田早苗さん: 『息切れ』している時というのは呼吸回数も多くなる印象があるのですが何故でしょうか?

松尾院長: 先ほど、『息切れ』というのは組織の酸素不足のサインだとお話ししました。組織が酸素不足になると脳にある呼吸中枢は呼吸の回数を増やして酸素不足を補う指令を出すため呼吸回数が増えます。

吉田早苗さん: ご家族の様子がいつもと違うぞと感じた場合は、年のせいと勝たずけるのではなく、一度専門の医師に診てもらうことが大切だということですね。

松尾院長: 心臓の検査では、心電図や採血だけでなく、心エコーといって心臓の弁の動きや逆流の有無、心臓の筋肉の働きが非常に正確に解る検査などは、針を刺すことなく全く痛みを感じることのない検査ですし、CTにしても外来で非常に正確な診断が出来ます。

また、肺の病気にしても、肺気腫や慢性閉塞性肺疾患などは、胸部レントゲンや呼吸機能検査で、比較的容易に診断出来ます。

動悸や息切れの検査でそれほど痛みを伴う検査はありませんし、早く見つけることによって重症化することなく治療可能な病気も多々ありますので、健康的な老後を送るためにも心配しすぎることなく受診することが大切だと思います。

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年12月14日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。