『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第110弾~
2024年12月26日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』
24回目、今年最後の相談所です。
本地洋一さん: 今日のテーマは『健康的な年末年始の過ごし方』です。
前回アルコールと心臓病のお話しの際に酒は必ずしも百薬の長ではないということを教えてきただきましたね。
吉田早苗さん: 年末年始は皆さんお酒を飲む機会が増えるうえにお正月お休みなので、家でダラダラと過ごす方も多いですよね。そんな中健康的に過ごす方法とはどうしたらいいか教えてください。
松尾仁司院長: 年末年始の過ごし方と健康的な生活ってある意味対極にあるといえます。
というのは・・・
≪年末年始は睡眠リズムが狂いやすい温床です≫
・夜更かし:大晦日やお正月になると、テレビを遅くまで見たり親戚と連絡をとったりと、遅くまで起きていることも多いかと思います。
・早起き:「初日の出を見よう!」といつもよりかなり早く起きたりすることもあるかもしれません(なお、 初日の出の時間はおおよそ6時45分~7時25分のようです)。
・寝正月:中には日中も含めてずっと寝ているという方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
皆さん、体内時計というワードを聞かれたことがあると思います。
体内時計(サーカディアンリズム)は、私たちの体内で約24時間周期のリズムを調整する生物学的な仕組みです。このリズムは、睡眠・覚醒サイクル、ホルモン分泌、体温調節など、さまざまな生理的プロセスに影響を与えます。実際に人間の体は“時計”のようなものを感じながら過ごしています。この時計、実はとても狂いやすい時計で、暗いところで何もしないと1日1時間遅れる(1日= 25時間のようにふるまっている)ことが知られています。人は、その時計を毎日調整してあげないと、どんどんと体内時計が狂い続けてしまいます。このリズムが乱れると、睡眠障害や体調不良の原因となることがあります。
つまり、生活のリズムが狂いやすい年末年始はこの体内時計のリズムを一気に狂わせやすい時期といえます。
吉田早苗さん: 体内時計という言葉は聞いたことがあります。体内時計の乱れは睡眠障害や体調不良の原因となりうるとのことですが、その調整は具体的にどのようにすればよいのでしょうか?
松尾仁司院長: 良い質問ですね!体内時計を整えるためには次の3つを心掛けるようにしてください。
• 朝起きたらすぐに自然光を浴びる:光が目に入ると、その光の情報は脳に送られます。この送られる先が“視交叉上核”という部分で、ここが体内時計の中枢になります。私達が朝起きて、カーテンを開け、日光を浴びることにより「眩しい!」という感覚は、実は脳の中での体内時計をガラッとリセットする大きなキューになっています。このことから、「寝正月」といえどもしっかり朝に起きてカーテンを開けることは、非常に重要なポイントと言えます。
• 起きるタイミング:本来夜更かしは体内時計を大きく狂わせるのですが、それでも夜更かしをしてしまった場合は、昼間にどのように睡眠をとるかがポイントになります。一番良くないのは、「夜起きて、昼間はずっと寝ている」というパターンです。まず、朝起きないので体内時計のリセットができなくなってしまいます。さらに、日中ずっと寝ていると、夜寝られなくなってしまうという昼夜逆転パターンの出来上がりになります。これを防ぐためには夜更かしをしても、いつもと同じ時間に一度は起きる。睡眠不足を昼寝で補うことは良いが、その場合午前中、もしくは午後の早い時間にとどめるようにする。
• 規則正しい食事と運動を心がける:朝食を食べると、その後あがった血糖を下げるためにインスリンというホルモンが出るのですが、このインスリンには肝臓の体内時計をリセットさせる効果が報告されています。つまり、朝食で糖質とタンパク質をとることにより体内時計を調整できる効果が期待できます。一方で、夜遅い時間の食事をとると、体内時計が乱れるとされているため、食事のタイミングは非常に重要になります。ちなみに、朝食を毎日食べる子供は、毎日食べない子供よりも学力や体力に優れているという研究があり、規則正しい食生活や明暗サイクルの調節によって体内時計を調整することは、心身両面でプラスにはたらくことが期待できます。
≪年末年始は太りやすい≫
お正月というのは、太りやすいというのは皆さん何となくわかると思います。その理由は、
・だらだらと食べ続けてしまう:
食事パターンが普段と一変し、お雑煮やおせち料理などをだらだら食べ続けてしまうことが太る原因のひとつです。たとえ少量ずつであっても、長時間食べ続けていると、気づかぬうちにいつもより多くの量の食べてしまうこともあります。
・糖質を摂りすぎてしまう:
摂り過ぎた糖質は、体内で脂肪として蓄えられてしまいます。
年末年始は、年越しそば• お雑煮など、糖質の多い食事を口にすることが多くなります。おせち料理にはれんこん・里芋など糖質の多い根菜類が多用されているだけでなく、栗きんとん・伊達巻きといった甘い味付けをした物も多く、糖質摂取量が増加しやすくなります。
・お酒を飲み過ぎてしまう:
お酒を飲むと、食欲が増して食べ過ぎてしまう傾向があります。また、お正月に飲む機会が多い日本酒は、糖質量が多め。おせち料理やおつまみを食べながら飲み続けると、糖質の摂り過ぎにつながりやすくなります。ビール・甘いカクテルも糖質量が多いので注意が必要です。
・睡眠不足になり、ホルモンバランスが乱れてしまう:
夜更かしなどで寝不足の状態(4時間睡眠)が2日間続いただけで、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、食欲を高めるホルモン「グレリン」の分泌が増加してしまうことが分かっています。
吉田早苗さん: 休暇太りを防ぐ対策を教えてください。
松尾仁司院長: 生活リズムが崩れやすい年末年始ですが、ちょっとした心がけで、休暇太りを抑えることができます。以下の3つを心掛けてください。
・メリハリのある生活を心がける:
「今日くらいはいいかな」という行動が積み重なると、だらだら食べや寝正月につながります。時間が空いたときは、ごろごろしたり何かを食べたりするのではなく、カラダを動かしてみましょう。
忙しくて普段は運動ができないという人こそ、ストレッチやウォーキングなどを実践するチャンスです。運動習慣がある人は、早朝ランニングなどにチャレンジしてみるのもおすすめです。食欲が増進してしまうのを避けるため、十分に睡眠をとることも忘れないでください。
・糖質の摂り過ぎに注意する:
主食と主食を組み合わせた力うどん(お餅入りのうどん)などは避けた方が無難です。お餅を食べるなら、野菜たっぷりのお雑煮にしたり、納豆や大根おろしなどと組み合わせたりしてみましょう。お餅を間食にしたら、次の食事の主食(ご飯・パン・麺類)を減らすことも大切です。
お酒を飲むときは、焼酎やウイスキーを選ぶと糖質摂取量を抑えることができます。水• お茶などをチェイサーとし、お酒を飲み過ぎないようにするのもよい方法です。
・よく噛んで食事をとる:
早食いは食べ過ぎの原因になります。お正月のご馳走もよく噛んで食べましょう。ひと口につき30回くらい噛み、箸を置きながら食べるのが早食いを防ぐコツです。
≪年末年始は医療機関がお休みのところが多くなります≫
年末年始は、医療機関も休診のところが多くなります。今年は12月28日からお正月を挟んで、来年の1月5日まで9日間お休みの場合、9日間はお薬を処方できなくなるかのうせいがあります。普段お薬を内服されている方は、残薬を確認して休暇中お薬がなくならないよう早めの受診をしてください。
吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2025年1月9日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。