『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第86弾~
2023年12月28日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第86回目の放送です。
本地洋一さん: 今年は暖冬と言われていますが年末になり、朝晩はかなり冷え込む日が増えてまいりました。冬場は循環器の専門病院である岐阜ハートセンターを受診される患者様が多くなるとお聞きしましたが、冬場に我々が生活していくうえで特に気を付けたほうが良いことについてアドバイスしていただけないでしょうか?
そんな中、今回の放送のテーマは『寒さと心臓病』についてです。
『冬は循環器疾患が増える季節です』
松尾院長: 心臓病を発症する患者様の数は季節に依存するということは明らかだと思います。
救急車で搬送される患者様の数も11月ころから多くなりますし、また重症患者様の数も増えてきた印象があります。
疫学的には、病気の発症には日内変動、週内変動、季節変動があると言われています。
心筋梗塞を例に挙げますと、夏場よりも冬場に多く発症することは疫学的には証明されていますし、一日のうちでは血管が攣縮を起こしやすい早朝に多く発症することが知られています。また週内では週末よりも月曜日に多く発症するという統計学的データもあります。
具体的には、以前にこの放送でお話ししたことのある急性心筋梗塞や急性大動脈解離などの命に関わるようなおそろしい循環器疾患の発生率は冬場が最も高いという疫学的調査結果がでています。
また、脳出血や心原性の脳梗塞も冬場に多いということも知られています。
本地洋一さん: 冬場は日によっては気温が氷点下になることもありますが、冬に循環器疾患の発生率が高くなるというのはこのような気温の低下が原因と考えられているのでしょうか?
『冬場はヒートショックの危険性が高い季節です』
松尾院長: 気温の低下もそうですが、それよりも恐ろしいのは気温の急激な変化です。冬場は家の外は氷点下の気温でも家の中に入ると暖房のおかげで20度以上あることが多いですし、家の中でもリビングとお風呂の脱衣所やトイレでは気温差が大きくなりがちです。
急激な温度の変化で体がダメージをうけることを『ヒートショック』といいます。
日本では年間約1万4000人の方が入浴中に亡くなると言われています。
その原因の多くは『ヒートショック』である可能性があります。
冬場の入浴では、暖かい居間から寒い風呂場へ移動するため、熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上がります。
お湯につかると血管が広がって急に血圧が下がり、血圧が何回も変動することになります。
寒いトイレでも似たようなことが起こりえます。
つまり、冬場は気温の急激な変化が自律神経の揺さぶりによる血圧の乱高下を起こしやすい季節と言えます。
血圧の変動は血管や心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。
本地洋一さん: ということは、冬場に脳卒中や心筋梗塞、大動脈解離などの恐ろしい病気にかからないように注意すべきことが、いくつかあるということですね!
どんなことに気を付ければよいのでしょうか?
『冬場の入浴とトイレではヒートショックに注意が必要です』
松尾院長: 若くて動脈硬化もなく、健康な方は少々の血圧の変動で脳卒中や大動脈解離、心筋梗塞を起こすことはまずありませんが、高齢で様々な生活習慣病をお持ちの方は血管そのものが既にダメージを受けていることが多くあります。そこに急激な温度差によるは『ヒートショック』が加わると心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患を発症するリスクが若くて健康な方と比較して高いことが分かっています。
吉田早苗さん:最近サウナ好きな方が多いようですが、サウナでも汗をかいた後に冷水に飛び込んだりしますよね。サウナ好きの方はこれを繰り返し行うことが気持ちよくて“整った”などと表現されますよね!
一方でリスナーさんからサウナで意識を失ったといったメッセージもいただいたことがあります。
サウナでも汗をかいた後に冷水に飛び込んだりすることは、よくないことなのでしょうか?
松尾院長: サウナと冷水浴を交互に行うことに関してですが、この入浴法は血管を拡げたり縮めたりを交互に繰り替えることによって新陳代謝を活発にするということが狙いだと思います。
確かに、若くて生活習慣病や心臓病などがないいわゆる健常人にとっては問題ないといえます。
しかしながら、循環器医の立場から言わせていただくと高血圧症、糖尿病や肥満などの生活習慣病や心臓病の方、血管が痛んでる方にとってはあまりお勧めできません。
本地洋一さん: ということは、サウナだけでなく冬場はお風呂の入り方にも注意が必要ということですね!具体的にはどの対策をしたらいいか教えてください。
『ヒートショックを防ぐには』
松尾院長: 一般的にお風呂に入るというのはリラックスできますし、楽しみにしておられる方も多いと思います。入浴は40度未満のぬるめのお湯がおすすめです。また循環器医の立場からは、長湯はお勧めできません。入浴する時間帯は深夜よりは早めの時間帯を心掛け、心臓病や高血圧症の人は全身浴よりも半身浴をお勧めしています。
冬場の入浴の際には、
1. 脱衣所と浴室を温める
暖かいリビングから脱衣所に移動した際の温度変化を軽減するために、暖房器具を置くなどの工夫をすると良いです。浴槽にお湯が溜まっている場合にはふたを外しておくと浴室の温度を上げることが出来ます。また、一番風呂は翌日が十分に温まっていないので、なるべく避けましょう。浴室を温める方法としてシャワーを使って急騰することで翌日の温度を上昇させることが出来ます。また、浴室の床にマットやスノコなどを置いておくことも有効です。
2. お風呂の温度は低めに設定
お風呂の温度が42℃以上になると、心臓に負担をかけることが知られています。38~41℃に設定して入浴することが勧められています。また、入浴する際は手や足などの心臓から遠い場所にかけ湯をして身体をお湯に慣れさせましょう。首までお湯につかることも心臓に負担をかけるので、浸かる際は胸のラインク台までにすることをお勧めします。
3. ゆっくりとお風呂から出る
お湯につかっている時は、身体が暖められ、血管が拡張して血圧が低下しています。その状態で急に立ち上がると心臓より上にある脳まで血液をはこぶことができず、眩暈を起こしたり、失神することがあります。お風呂から出る時はゆっくり立ち上がることを心掛けてください。高血圧症などで降圧剤を内服している人は特に注意が必要です。また、飲酒後は血圧が下がることが知られていますので、飲酒後の入浴は避けたほうが良いですし、入浴前には水分を接種しておきましょう。
本地洋一さん:リスナーの皆様の中でも、ご高齢の方、心臓病や脳卒中の既往のある方はもちろん、生活習慣病をお持ちの方は今のお話が『ヒートショック』の予防につながると思います。
そういった病気をお持ちの方のご家族も協力してお家の中の環境を整えたりするとより効果が上がりますよね!
吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2024年1月11日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。