2026年2月26日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 の放送です。
今回の放送のテーマは急性大動脈解離についてです。
命を脅かす「急性大動脈解離」──強い痛みを感じたら、迷わず救急車を
今回の放送には、リスナーのトム・ジェリさんからお便りをいただきました。
「52歳のとき、スタンフォードA型の急性大動脈解離で上行・弓部大動脈人工血管置換術を受けました。 当時は病気のことを全く知らず、術後に“奇跡的に助かった”と言われて初めてその恐ろしさを知りました。 ラジオを聴いている皆さんにも、この病気の怖さを知ってほしいです。」
今回はこのご要望にお応えし、急性大動脈解離について詳しくお話します。
●急性大動脈解離とはどんな病気か
大動脈は、心臓から全身へ血液を送る“体で最も太い血管”です。 直径は2〜3センチほどあり、内膜・中膜・外膜の三層構造でできています。
この大動脈の壁に亀裂(裂け目)が入ると、血液が壁の間に流れ込み、 メリメリと裂け目が広がっていくのが急性大動脈解離です。
裂け目が広がると、本来の血流が圧迫され、 脳・腎臓・腸・足など、あらゆる臓器の血流が途絶える危険があります。
●放置するとどうなるのか
急性大動脈解離は発症後の時間が命を左右します。
• 発症後1時間ごとに 約1%ずつ死亡率が上昇
• 24時間放置 → 25%が死亡
• 48時間放置 → 50%が死亡
• 1週間放置 → 約70%が死亡
非常に危険な病気であり、時間との勝負です。

●早く病院に来れば助かる可能性は高い
治療を受ければ、多くの方が助かることも分かっています。
• 上行大動脈(心臓に近い部分)の解離 → 手術が必要。救命率は 70〜80%
• 下行大動脈(胸からお腹にかけて)の解離 → 血圧管理で安定することも多く、95%が退院可能
つまり、早く病院に来ることが何より重要です。

●どんな症状が出るのか
急性大動脈解離には特徴的な症状があります。
• 今まで経験したことのない激烈な痛み
• 胸・背中の痛み
• 痛みが移動する(上から下へ)
裂け目が広がる方向に合わせて痛みが移動するのが特徴です。
「少し痛い」程度ではなく、 “人生で一番痛い”と表現されるほどの強烈な痛みが多いと言われています。
●迷わず救急車を呼ぶべき痛み
心筋梗塞と症状が似ていることもあり、自己判断は危険です。 夜中でも、深夜でも、激しい胸痛・背部痛があれば救急車を呼ぶべき痛みです。
CT検査で診断がつき、治療に進むことができます。

●なぜ起こるのか──最大の危険因子は「高血圧」
大動脈解離の最大のリスクは高血圧です。
• 血圧が高い → 血管の壁に強い力がかかる
• 壁が弱い部分に亀裂が入る
• 痛みでさらに血圧が上がり、裂け目が一気に広がる
また、マルファン症候群など、先天的に血管が弱い方は若くても発症します。
高血圧を放置しないことが命を守る
高血圧は痛みがないため軽視されがちですが、 大動脈解離・心筋梗塞・脳卒中など、命に関わる病気の大きな原因です。
若い頃から血圧を意識し、 定期的な健康診断と生活習慣の見直しがとても大切です。
●まとめ
• 急性大動脈解離は時間との戦い
• 激烈な胸痛・背部痛、痛みの移動は要注意
• 迷わず救急車を
• 高血圧の管理が最大の予防
• 早く治療すれば助かる可能性は高い
トム・ジェリさんのお便りのように、 「知らなかった」では済まされない病気です。 このブログを通して、一人でも多くの方が命を守る行動につながれば幸いです。

次回のハート相談所は2026年3月12日(木)にお送りいたします。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。