こんにちは。理学療法士の久世です。8月は盛夏で連日の暑さで、食欲が落ちたり、冷たいものばかり食べたくなったりしていませんか?心臓の健康を守るためには、栄養バランスの良い食事と定期的な運動の両方が不可欠です。どちらか一方では効果が十分ではありません。今月は、食事と運動のバランスの取り方についてお伝えします。

なぜ「食事」と「運動」の両方が必要なのか

運動だけで健康になると思っていませんか?実は、運動の効果を最大限に引き出すには、食事の質が非常に重要です。逆に、いくら食事に気をつけても、運動なしでは心臓機能は改善しません。

2024年に米国心臓協会が発表した心臓リハビリテーションの包括的ガイドラインでは、この「食事と運動の組み合わせ」が強調されています。運動は心肺機能を高め、筋肉を増やします。一方、栄養バランスの良い食事は、その運動の効果を支え、体の回復を促進し、心臓を保護します。両者が協力してこそ、初めて心臓の健康が実現するのです。

(参考文献:Brown TM, et al. Core Components of Cardiac Rehabilitation Programs: 2024 Update. Circulation. 2024)

心臓に優しい食事のポイント

①減塩食

心臓患者さんにとって、塩分制限は最も重要です。塩分の摂取が多いと、体に水分が溜まり、血圧が上がり、心臓への負担が増加します。目標は1日6g以下(塩小さじ1杯程度)ですが、実際には1日3-5gに抑えることが理想的です。

実践的には、塩辛い味付けの加工食品を避け、調味料は計量して使用し、醤油やソースをかける代わりにレモンやポン酢などを活用します。外食時は塩分が高いため、なるべく自炊を心がけてください。

②タンパク質

筋肉を維持するには、良質なタンパク質が欠かせません。特に、6月のブログで紹介した筋力トレーニングを行っている場合は、タンパク質摂取がより重要になります。

推奨タンパク質源として、鶏肉や白身魚などの低脂肪肉、豆類、卵、低脂肪乳製品が挙げられます。1日の摂取量の目安は、体重1kg当たり1-1.2gです。体重60kgであれば、1日60-72gのタンパク質が必要となります。

③野菜と果物

多彩な野菜と果物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維の宝庫です。毎日、色の異なる野菜を3種類以上摂取することが理想的です。赤色(トマト)、緑色(ほうれん草)、黄色(かぼちゃ)など、色とりどりの野菜には異なる栄養素が含まれています。

特に、カリウムが豊富な野菜(ほうれん草、アボカド)は、高血圧予防に有効です。ただし、腎機能が低下している場合は、医師に相談してからカリウム豊富な食材を摂取してください。

④健康的な脂肪

全ての脂肪が悪いわけではありません。心臓に良い脂肪もあります。オリーブオイルに含まれるオレイン酸、青魚(サバ、イワシ)に含まれるオメガ3脂肪酸は、むしろ積極的に摂取すべきです。一方、バター、ラード、揚げ物に使われた油などの飽和脂肪は控えるべきです。

⑤運動との相乗効果を生み出す食事のタイミング

運動前後の食事のタイミングも、効果を高めるために重要です。運動の2-3時間前には、軽い食事(おにぎりやバナナ、ヨーグルトなど)を摂取しましょう。運動直前の食事は避け、十分な水分補給を心がけてください。

運動後30分以内に、タンパク質と糖質を含むスナック(牛乳にバナナ、またはチーズとクラッカーなど)を摂取することで、筋肉の回復と疲労回復が促進されます。

《1日の食事プランの例》

朝食では、玄米ご飯(塩なし)に焼き鮭とほうれん草のおひたし、さらに味噌汁(塩分少なめ)とフルーツを組み合わせます。これで、炭水化物、タンパク質、野菜、ビタミンがバランスよく摂取できます。

昼食は、蒸し鶏と野菜サラダ(ドレッシングは塩分少なめ)、玄米ご飯を食べます。間食としてのオリーブは、良質な脂肪補給に最適です。

夕食は、白身魚のムニエル(塩分少なめ)、蒸し野菜、全粒粉パンという組み合わせが効果的です。就寝の2時間前の夜食は避け、水分はほどほどにしてください。

よくある質問

Q1. 塩分6g以下って、実際にどのくらい?

A. 塩小さじ1杯が約6gです。つまり、1日分の全ての食事で、塩小さじ1杯分程度の塩分しか使えないということです。これは多くの人にとって非常に少なく感じるでしょう。そのため、調味料や加工食品を工夫して使い分ける必要があります。

Q2. 運動をしない日も食事に気をつけるべき?

A. はい。食事は運動の有無に関わらず、毎日の習慣です。むしろ、運動をしない日だからこそ、栄養バランスの良い食事で体を支える必要があります。

Q3. 甘いものが好きですが、全く食べてはいけない?

A. 完全に禁止ではありませんが、量と質を工夫してください。和菓子(羊羹など)は、洋菓子(ケーキなど)よりも脂肪が少ないです。また、砂糖の代わりにはちみつやメープルシロップを使うのも一つの方法です。最も大切なのは、全体のバランスです。

Q4. 外食が多い場合はどうする?

A. 外食の塩分は通常、自炊の2-3倍高いです。外食時は、塩辛い料理(揚げ物、醤油がかかった丼物など)を避け、野菜が多く含まれたメニューを選びましょう。また、調味料を別添えにしてもらい、自分で量を調整することも工夫の一つです。

今月のアクション:食事記録と運動の組み合わせを実践

具体的な目標として、まず1週間の食事記録をつけてみましょう。朝、昼、夕、間食で何を食べたか、どのくらいの量だったか、そして塩辛さの程度をメモします。その後、栄養士に相談してアドバイスを受けることをお勧めします。

次に、現在行っている運動(散歩、筋力トレーニング、ラジオ体操など)を記録し、運動前後の食事タイミングを工夫します。運動の2-3時間前に軽食を摂り、運動後30分以内にタンパク質と糖質を含むスナックを摂取するという習慣をつけましょう。

最後に、4週間後に自分の体の変化を確認します。血圧は下がったか、握力は上がったか、体調は改善したか。数字で成果を実感することで、さらにモチベーションが高まります。

最後に!

食事と運動。この両者は、車の両輪のようなものです。どちらか一方だけでは、前に進むことはできません。心臓の健康を守り、充実した人生を送るためには、この二つを同時に大切にすることが不可欠です。

毎日の食事に少し注意を払い、運動のタイミングを工夫し、心臓と体を労わってあげましょう。

※このブログで紹介した栄養情報は一般的なガイドラインです。個別の食事療法については、必ず医師や栄養士に相談してください。

次回予告:

9月は「転ばぬ先の体操」をテーマに、転倒予防と安全な運動についてお伝えします。お楽しみに!

理学療法士はあなたにとってベストな運動管理を提供します。ご興味のある方は心臓リハビリテーション室(058-213-0488)までご連絡ください。

また、ご質問がある方は是非ご連絡頂ければ幸いです。