フットケアチーム
当院では2015年4月より「あしの外来」を開設し、あし診療を開始しました。担当医である形成外科・菰田医師(現形成外科部長)が2017年4月より常勤医となり、より専門的・集学的な治療が可能となりました。
「あしの外来」ではあしのしびれや冷え、痛み、むくみ、変形や色の変化、できもの、傷・壊疽など、あし(股関節から足部)に関する症状すべてを診察しております。受診された方の症状や原因疾患は非常に多種多様です。2017年より週2回の外来診察とさせていただいておりますが、1年半で約500名の新患患者様が来院されました。あし難民の多さを再認しております。
さまざまな症状の原因を診断した後に、必要に応じてカテーテル治療や手術療法を行っております。しかし、それだけではなく、正しい歩き方の指導やあし変形に対しての靴や中敷きの処方、装具作成、むくみに対する弾性ストッキングや弾性包帯、ドレナージなど圧迫療法の指導も行い、歩行機能の改善・温存に努めています。明らかに整形外科や神経内科など、他診療科の疾患の場合は連携する専門病院へご紹介をさせていただいております。
入院治療では下肢動脈硬化に対するカテーテル治療やバイパス術、静脈瘤へのラジオ波治療といった血行再建だけではなく、重症下肢虚血や静脈性潰瘍、リンパ性創傷などの難治性脈管関連創傷に対する集学的治療を行っております。循環器特化病院の利点に運動器リハビリテーション、植皮術や皮弁術といった創傷治癒の概念を組み合わせることで高いレベルでの治療が可能となりました。2017年4月からの期間で重症下肢虚血治療例は39名51肢で、肢温存を得たのは44例、86%でした。下肢動脈硬化に対するカテーテル治療件数は2017年度で142件、2018年度は148件でした。当院ではこの治療結果に満足せず一生涯歩けるあしを残すことを目標とし、予防から在宅まで地域のあし救済に尽力します。
本邦におけるあし診療の問題点は学童教育にあし教育が無いことから始まります。欧米のように幼少時に靴の履き方や歩き方の指導がない故に、日本人は自己のあしに関心がありません。あしの見方を知らない故に、なにかしらの症状が出現して初めて異常に気づく、重篤になってから来院する、という現実があります。現在、院内だけではなくて院外に向けて勉強会も開催しておりますが、今後も「正しい歩行は心血管の機能回復・維持に重要であり、長生きの秘訣である」という信念の基に、地域に貢献できる医療を継続したいと考えております。