皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

2021年4月8日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第20回目の放送です。

今回の放送のテーマは循環器系のあしの病気の第2弾として『あしのむくみ』についてです。

本地洋一さん:まずは『あしのむくみ』とは何か?をお話しいただき、そのあと『あしのむくみ』を起こす病気や治療法についてお話しください。

松尾仁司院長: 前回の放送で閉塞性動脈硬化症をテーマとしてお話しした際に、あしの血管には皮膚、筋肉、骨などの各組織に酸素や栄養を運ぶ動脈と、各組織から老廃物や二酸化炭素を運び出す静脈があるとお話ししました。閉塞性動脈硬化症はあしの動脈が詰まったり、細くなったりして起こる病気で、症状としては間欠性跛行や重症の場合はあしの潰瘍(皮膚の表面が炎症を起こして崩れ、深いところまで傷ついた状態)や壊死(足の組織が死んでしまう状態)を起こすこともあります。

今回お話しする『あしのむくみ』あしの静脈やリンパの還流障害によって起こる場合が多くあります。

動脈血は心臓というポンプから強い力で押し出されて全身に酸素や栄養を運びます。脳や筋肉、内臓などに酸素や栄養を運んだあと、血液は老廃物である二酸化炭素を静脈を通じて心臓に戻します。

血液やリンパ液は空気より重たいため、日常生活で心臓より下にあることが多いあしには血液が溜まりやすいのですが、静脈には逆流を防止するための静脈弁がある上に、ふくらはぎの筋肉が静脈血を心臓に押し戻すためのエンジンの役割を担っているため、これらが正常に機能している場合には血液があしに溜まることはありません。

しかしながら静脈弁が障害されて静脈が逆流するようになってしまったり、静脈自体が閉塞したり、加齢や病気などで長期間寝たきりになったり、ほとんど歩かないような生活をしていると、静脈血が還流障害を起こして心臓に戻れずにあしに溜まってしまい、これが『あしのむくみ』の原因になります。

本地洋一さん:静脈瘤という病気がありますが、『あしのむくみ』と関係があるのでしょうか?

松尾仁司院長:足の静脈には二種類ありまして、一つは皮膚に近いところを流れる表在静脈、もう一つはあしの中心に近いところを流れる深部静脈です。表在静脈の走行はやせた人などは青く見えますが、深部静脈は深いところを流れる太い静脈のため体の外からは見えません。

静脈瘤とは静脈が拡張して“ぼこぼこに膨らむ”病気です。通常、柔らかい青紫色のこぶが下腿にミミズのように見られます(https://gifu-heart-center.jp/varicose_veins/)。

太い深部静脈が閉塞したり、静脈弁が壊れて静脈に逆流が起こることにより、静脈の還流圧が高くなることによって、その結果静脈が蛇行し、ぼこぼこに膨らんでしまう病気です。

症状としては、下肢静脈の流れが悪くなる(うっ血)ため、『あしのむくみ』、見た目が気持ち悪い、あしがだるい、こむら返り、痛みやかゆみなどがあります。

直接命に関わる病気ではありませんが、年単位で悪化していくこと、血栓を伴ったりすると赤くはれたり(血栓性静脈炎)、ひどくなれば皮膚色が浅黒くなり場合によっては皮膚潰瘍ができ、そこから出血や感染を引き起こす可能性もあります。

本地洋一さん:静脈瘤の治療方法としてはどのようなものがあるのでしょうか?

松尾仁司院長:まずは、“何故静脈瘤が出来たか?”、“あしのむくみの原因はどこにあるのか?”を正しく評価することが大切です。腹部臓器や、下肢静脈の超音波検査を行い、深部静脈や腹部の静脈に閉塞や、狭窄などがないかを鑑別します。

エコノミークラス症候群や腹部臓器にガンなどの巨大な腫瘍がある場合は、静脈瘤だけを治療してももともとの原因を治療していないため、自覚症状の『あしのむくみ』は改善されません。したがって、これらの除外診断はとても大切と言えます。

静脈瘤の治療は瘤のサイズにより、保存的治療と手術などの侵襲的治療があります。クモ状、糸状静脈瘤の場合の治療法は通常弾性ストッキンによる圧迫保存療法となります。

静脈瘤のサイズが3mm以上の場合は静脈を糸で縛って静脈瘤を起こした静脈を閉塞させる高位結紮術、レーザーやラジオ波によって血管内を焼き、静脈瘤を起こした静脈を閉塞させる血管内焼灼術、静脈内にカテールを挿入し、そこから血管内に糊を注入することによって静脈瘤を起こした静脈を詰めてしまう血管内塞栓術などがあります。

この3つの侵襲的治療はいずれも局所麻酔で行う比較的容易な手術で、岐阜ハートセンターでは1泊2日で行っています。

また、再発率が3%~5%と極めて低い治療法であるため、患者様の満足度の高い治療と言えると思います。

吉田早苗さん:先ほど静脈瘤の自覚症状にこむら返りがあるとのことでした。私はこむら返りがひどいです。足のむくみに何か良い運動を教えてください。

松尾仁司院長:ふくらはぎの筋肉が静脈血を心臓に押し戻すためのエンジンになるとお話ししました。ふくらはぎの筋肉運動などはあしの血流改善やむくみの防止に効果的です。

椅子に座って足首を曲げたり、伸ばしたりする運動や、あるいは仰向けに寝転んで、自転車をこぐように足を左右交互に回したりすると静脈血が心臓に向かって流れやすくなり、うっ血が改善されますので、お試しください。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2021年4月22日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。