皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?
9月17日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第6回目の放送です。
心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。
前回の放送では松尾仁司院長はリモート出演でしたが、今回は3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。
今回のテーマは不整脈シリーズの第3弾、今回のテーマは『頻脈』についてです。
松尾仁司院長:人間の心臓は一般的には安静時に1分間に60回から80回程度の拍動数で動いています。それに対し『頻脈』とは心臓の拍動する数が多くなった状態です。定義的には脈拍数が1分間に100回以上のことを『頻脈』と呼びます。
ただし、運動した時などには身体は安静時よりも多くの血液を必要とするため心臓は脈拍数を120回→140回→160回/分と増やして多くの血液を全身に送り出します。また、精神的な緊張状態でも交感神経の興奮により脈拍数は高くなります。これらの場合の『頻脈』は病気ではありません。
今回のお話は全身の筋肉や臓器が必要としていない状況にもかかわらず、脈が異常に早くなってしまう『頻脈』、つまり病的な『頻脈性不整脈』のお話です。皆さんご存じのように、心臓は心筋という特殊な筋肉で構成されていて収縮と拡張を繰り返すことにより全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。
心筋の収縮と弛緩は心筋内を規則正しく電気刺激が流れることによって起こります。病的な頻脈・徐脈といった不整脈は、何らかの原因によって心筋を興奮させ収縮を起こさせている電気の流れの異常によって起こることが知られています。
本地洋一さん:この電気の流れを感知して画像に出すのが心電図というわけですね!
松尾仁司院長:そのとおりです。
本地洋一さん:心電図異常の患者さんというのは先生の外来にもたくさん来られるのですか?
松尾仁司院長:はい、心電図異常のある患者様はたくさんお見えになります。しかしながら『頻脈性不整脈』不整脈の患者様に関しては、一日中常に『頻脈』が持続している患者様はむしろ少ないと言っていいでしょう。頻脈発作の持続時間は人によってさまざまで、病院にいる時には通常の脈拍数で心電図に異常が出ない患者様も多くお見えになります。
このような方にはホルター心電図といって24時間心電図を記録することや植込み型心臓モニタ(https://gifu-heart-center.jp/cardiology_blog/insertable_cardiac_monitor/)によって、はじめて不整脈の本体が見えてくる場合もあります。
『頻脈性不整脈』には心房細動、心房粗動、房室結節回帰性頻脈、心室細動、心室粗動などといった様々な種類があります。これらのうち頻脈性心房細動はその発作により脈が速くなり、患者様は動悸を訴えて辛い思いをすることが多いですが、心房細動自体が心臓を止めてしまうことはありません。ただし、心房細動が持続すると心臓の中に血栓という血の塊ができやすくなります。その血栓が何らかの拍子に血液と一緒に心臓から拍出され脳の血管に飛んで脳梗塞を引き起こす可能性があります(心原性脳梗塞)。
いずれの『頻脈性不整脈』も心臓内の電気の流れの異常(乱れ)を正しく診断し、修正することがその治療につながるわけです。
また、その『頻脈性不整脈』治療も不整脈の種類、患者様の状態によってお薬で発作を抑えられるものもありますし、カテーテルアブレーションという治療などがあります。
本地洋一さん:カテーテルアブレーションとは聞きなれない治療法ですが、どのような治療法なのでしょうか?
松尾仁司院長:カテーテルアブレーションとは足の付け根の血管から心臓へ電極カテーテルを通して、電気の流れに異常をきたしている原因となる心筋を同定し、その標的部位を50℃~60℃の電気エネルギーで障害する治療法で、不整脈の種類にもよりますが、発作性上室頻拍では治療成功率が95%以上であり、根治性の高い治療法です。また、最近は冷凍バルーンアブレーションという治療法が登場しました。これは高周波アブレーションと同じく、足の付け根から、心臓まで冷凍バルーンを挿入し、肺静脈内でバルーンを拡張、内部を液体亜酸化窒素でマイナス60℃程度に冷やすことで、肺静脈を左心房から電気的隔離する方法です。この治療が適応となる不整脈は、現在発作性心房細動だけですが、高周波アブレーションよりも手術時間は短く、術後の再発率も低いという利点があります。(https://gifu-heart-center.jp/cryoablation/)。
本地洋一さん:電気の流れに異常をきたしている原因となる心筋を同定するといわれましたが、すごく難しいことなのではないですか?
松尾仁司院長:さすが本地さん、大変良い質問ですね!おっしゃる通りで、不整脈の原因となっている電気の流れの異常を正確に診断することが、この治療を成功につなげるうえで非常に重要なポイントとなります。最近ではマッピングといって、心臓の中の電気の流れを画像化する技術があるんです。
このシステムを用いることによって心臓の中をどのように電気が流れているかをリアルタイムに視覚的に確認することができるようになりました。このため、アブレーション治療の成功率が向上するとともに手技時間の短縮にもつながっています。
現在のところ、発作性心房細動および持続性心房細動では1回の治療で75%、2回の治療で90%の根治率です。永続性心房細動では1回の治療で60%、2回の治療で80%の根治率です
本地洋一さん:頻脈性不整脈で苦しんでいる人の生活の質向上のためには、良い治療法ですね! ただ、カテーテルを心臓に入れるのって患者にとってはそれ自体が恐怖ですから治療を躊躇する患者さんも多いのではないでしょうか?
松尾仁司院長:WWW! おっしゃる通りです。アブレーションに限らず、カテーテル治療というのは、足の付け根の血管、手首の血管、肘の血管、頚静脈などからカテーテルを心臓まで挿入するわけですから、ある程度のリスクはあります。
したがって、我々はカテーテル治療をすることにより患者様が得られるメリットとこのような侵襲的な治療を行うリスクのデメリットを天秤にかけて治療選択をしています。
本地洋一さん:このアブレーション治療というのは入院しなくても出来るものですか?また年齢制限はあるのですか?
松尾仁司院長:この治療は入院して行います。その理由は足の血管からカテーテルをいれるため、術後の止血が完全か?不整脈の再発が起こっていないか?などをしっかり確認する必要があるからです。
アブレーション治療の対象年齢につきましては、かなりご高齢でも自覚症状の非常に強い患者様にはこの治療を行うことは可能だと思います。ただ薬物療法とアブレーション治療を完全に別々に考えるのではなく、先ほども申しましたようにそれぞれのメリットとリスクを天秤にかけて両方を上手に使って症状をコントロールすることが大切です。
4回にわたり、脈に関するお話、動悸(頻脈)、徐脈性不整脈と頻脈性不整脈の治療に関するお話をしてきました。
詳しくは岐阜ハートセンターのホームページをご覧ください。
https://gifu-heart-center.jp/arrhythmia_treatment/
次回の放送は9月24日(木)を予定しています。
また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。
本日の放送のURLは下記のとおりです。
きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/08/27/木 14:00-16:00 http://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20200917143300