皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

10月8日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第8回目の放送です。

心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。

今回も3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。

今回のテーマは『心臓弁膜症の治療』についてです。

本地洋一さん:前回の放送では『心臓弁膜症』ってどんな病気で、どんな症状が出るのかを教えていただきました。今回は治療についてです。心臓弁膜症というのは心臓の弁のトラブルであるとのことですが、そのトラブルを改善するには実際どのような治療法があるのでしょうか?

松尾仁司院長:前回もお話ししましたが、『心臓弁膜症』の症状と言いますと、少し動いただけで、息切れがする(労作時の息切れ)といったものが最もポピュラーです。それ以外にも胸痛や意識消失といった症状で現れることもあります。

これらの症状が出てきた際には、すでに心臓の弁は状態がかなり悪くなっていて、何らかの治療介入が必要となることが多くあります。きちんと的確な診断をした結果、手術などの侵襲的治療が必要であると判断された場合は積極的に適切な治療を行わないと命を落とすことにつながりかねません。
お薬による治療は、息切れや呼吸困難といった心不全症状を軽減させることはできますが、悪くなった弁を修復することはできません。したがって、『心臓弁膜症』治療は、侵襲的な治療が主流となります。これには外科手術と、カテーテルを用いた人工弁の植え込み術があります。

外科的手術でポピュラーなものは、全身麻酔下に胸骨という胸の真ん中にある骨を切開して心臓を露出させて障害された弁を人工弁に付け換える手術です(大動脈弁置換術、僧帽弁置換術 https://gifu-heart-center.jp/valvular_disease_treatment/#1 )。

吉田早苗さん:人工弁とはどのような材質で出来ているのですか?

松尾仁司院長:人工弁にはカーボンで出来た機械弁と牛の心膜あるいはブタの心臓弁を免疫学的に人体に適合するように特殊処理をした生体弁があり、患者さんの状態や弁の状態によりどちらの人工弁にするかを決めます。

生体弁
機械弁

また最近では、心臓手術をより小さい傷・少ない体の負担だけで行えるようになりました。

それが完全内視鏡下に行う低侵襲心臓手術【MICS (Minimally Invasive Cardiac Surgery:ミックス)  https://gifu-heart-center.jp/surgical_technique/#mics 】です。この手術法は胸骨を切開するのではなく、もともと隙間のある肋骨の間から細い内視鏡カメラと手術器具を挿入して心臓手術を行います。
MICSで心臓手術を行うと、通常の心臓手術に比較して、傷が小さく目立たないだけでなく、術後の痛みや出血量が極めて少なくなりますし、感染症の発生リスクも低くなります。

大動脈弁狭窄症に対しては、近年さらに低侵襲なカテーテルを用いた治療法もおこなわれるようになってきました。経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve implantation https://gifu-heart-center.jp/outpatient_tavi/ )です。その方法は、足の付け根や、鎖骨の下、心尖部等からカテーテル(治療の管)を用いて小さな穴より劣化した弁の代わりに新しい人工弁(生体弁)を留置してくるという治療です。

これらの侵襲的治療を行うと、心臓の負担は劇的に取れますから、来院された際には少し動いただけで呼吸困難になり、杖を使ってもゆっくりゆっくりしか歩けなかった方が、治療がうまくいって退院するときには杖を忘れて帰ってしまったなんてこともありましたよ。

本地洋一さん:今までのお話をお聞きすると、循環器疾患というのは内科にしても外科にしても手術やカテーテル治療によって、症状が劇的に改善し生活が圧倒的に豊かになるという印象がありますね!

松尾仁司院長:たしかに循環器領域の治療というのは、疾患をきちんと評価して適切な治療を行えば、患者さんにとっては大変良い結果が得られることが多くあります。

吉田早苗さん:技術や医療機器の進歩によって患者さんの負担が小さくなったとはいえ、心臓手術やカテーテル治療は『怖い』というイメージがありますよね!

本地洋一さん:松尾仁司院長は循環器内科がご専門なわけですが、先生が患者さんにいくらわかりやすく丁寧に治療効果を説明しても、やっぱり心臓のカテーテル治療や手術に恐怖を感じて侵襲的治療は受けたくないという患者さんはお見えになるのではないですか?

松尾仁司院長:ほとんどの患者さんは治療に恐怖感を感じると思います。また、患者さんにはその人その人にいろいろな人生観というものがあります。我々医師は医学的に「あなたの病気はこの治療をすると良くなりますよ!」と言うことが出来ます。しかしながら、実際に治療を受けるのは患者さんご自身なわけです。「私はもう90歳近いので、手術は受けたくありません」といったご意見をいただくこともあります。

ただ、今お話ししたように心臓の手術やカテーテル治療は日々劇的に進歩しており、高齢の方や体力のない方に対しても最小限の負担で効果の高い治療法も可能となってきています。いろいろな治療法の選択肢があるなかで、医学的見地から患者さんに最も適した治療法を提案するのは、医師の重要な役割です。最近、共同意思決定(Shared decision making)という言葉が使われるようになってきました。これは患者さんやご家族と我々医療従事者が患者さんの病状や体力のみならず、患者さんの人生観、家庭環境や退院後のご家族のサポート体制などを話し合い、一緒になって患者さんにとって最もよい治療法を選択していくということです。特に循環器領域の病気は、その侵襲的治療が患者さんの生死に直結しますので、我々は患者さんやご家族と一緒になって、今後の人生をいかに豊かに過ごしていただくかを考えたいと思っています。

吉田早苗さん:この続きは10月22日(木)にお送りいたします。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。

きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/10/08/木  14:00-16:00 http://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20201008143315

聴取可能期限:2020年10月09日 18:49まで