皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

10月22日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第9回目の放送です。

心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。

今回も3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。

今回のテーマは『高血圧症』についてです。

本地洋一さん:『高血圧症』ってよく耳にします。私の周りにも血圧が高くてお医者さんでお薬を処方してもらい、それを内服してコントロールしている方がたくさん見えますが、そもそも『高血圧症』とはどのような病態で、どのような症状が出るのでしょうか?わかりやすく説明をお願いします。

松尾仁司院長:『高血圧症』ってなんですか? ということですが、その前にまず、血圧について少しだけお話ししますと、血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことで、心臓から押し出される血液の量と、血管の太さ血管壁の弾力性によって左右されます。つまり、心臓が送り出す血液の量が多くなると血管の壁にかかる力が強くなり、血圧は高くなります。また、手足などの末梢の血管が何かしらの理由で収縮したり、動脈硬化などで硬く細くなった場合でも血圧は上がります。

よく、“上の血圧”とか“下の血圧”という言い方を耳にしますが、上は心臓が収縮して血液 を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。

定義的には収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上のとき、『高血圧症』と診断されます。しかしながら、血圧は日内変動といって常に一定ではありません。昼間起きているときは交感神経が優勢ですので、夜間眠っているときより高くなりますし、精神的なストレスや怒りなどで興奮した場合も血圧は高くなります。また、運動によって手足の筋肉に大量の血液が必要になった場合は、普段の血圧が120mmHgの方でも200mmHgまで血圧が上昇することは珍しくありませんし、これらの場合の血圧上昇は正常な反応と言えます。一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

ただ、われわれ医者は初めて診察する患者さんの血圧が150mmHgだからといってすぐに『高血圧症』お薬を出したりすることはまずしません。白衣高血圧という高血圧があって、家庭では血圧は正常範囲なのですが、診察室では血圧が上がってしまう方がしばしば見えるからです。私の場合は家庭に血圧計がある方には朝起きてから1時間以内、お薬を飲んでいる方はお薬を飲む前の血圧と、夜 就寝前のゆったりした状況での血圧を1日に2回、それを1週間程度毎日測っていただいた記録を見せていただいて判断するようにしています。

本地洋一さん:なるほど、病院の先生の前で1回だけ測った血圧が140mmHgを超えていたからといって、それだけで『高血圧症』とは言い切れないということですね!

吉田早苗さん:ということは1日に何度も測ったほうが良いということですか?

松尾仁司院長:患者さんの中には心配性の方で、測った血圧が高いとその10分後とかに何度も何度も測定する方もお見えになりますが、そこまで頻回に測る必要はありませんよ!160mmHg程度までの血圧上昇は日常生活においては十分起こりえる正常な血圧変動である場合が多いので過度に心配する必要はありません。人は不安を感じるほど血圧が上がる傾向がありますので、むしろ気持ちを大らかに持ちゆったりとするほうが良いと思います。
しかしながら、収縮期血圧が200mmHgを超えて頭痛やめまいを伴っている場合などは『高血圧緊急症』といって迅速な診断と治療を要する病態である可能性がありますので、早急に受診が必要となります。

本地洋一さん:なるほど、心穏やかに過ごすことも大切だということですね!ところで、この『高血圧症』は自覚症状がない方も多くお見えになると聞きますが、治療をせずに放置したままにすると何かまずいことが起こるのでしょうか?

松尾仁司院長:さすが本地さん、素晴らしいご質問ですね!先ほど『高血圧症』の定義は収縮期血圧が140mmHg以上と言いましたが、確かに『高血圧症』と診断がついても血圧が150mmHg~160mmHg程度の血圧では多くの方はほとんど自覚症状がありません。

それでは、自覚症状もないのに何故血圧を気にするのでしょうか?

『高血圧症』を放置するということは、血管の壁に常に強い圧力がかかった状態が持続するということです。血管壁はその圧力に対して、次第に厚く硬く変化し、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、血管の弾力性が失われて、血管の内腔はますます狭くなり、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ることがあります。

この悪循環が長年続くと体の様々な臓器に恐ろしい合併症を起こしてくる可能性が知られているからです。かつて、九州にある久山町という町で有名な疫学調査が行われました。

この研究によりますと収縮期血圧が140mmHg以上のいわゆる『高血圧症』の方たちは130mmHg以下の正常血圧の方に比べ脳卒中の発生率が3倍であり、さらに180mmHg以上の『高血圧症』の方たちの脳卒中の発生率は、正常血圧の方の8~9倍になるということでした。

また、『高血圧症』を放置した場合心臓は、常に強い力で血液を送り出す必要がありますので、心不全の原因の一つとなることが知られていまし、さらに『高血圧症』を放置することによる悪循環は血管そのものに大きな負担をかけるため、大動脈の動脈硬化を進行させ、大動脈瘤や大動脈破裂のような恐ろしい病気の原因となることが分かっています。

https://gifu-heart-center.jp/aortic_disease_treatment/

このように『高血圧症』を放置は、お家に発生したシロアリと同じではないかと思います。シロアリを放置すると柱や床などがどんどんダメになって最後にはお家が倒れてしまいますよね。

『高血圧症』も放置すると、心臓や脳だけでなく、血管自体が障害されてしまうため、全身の臓器に合併症を起こすリスクとなります。

自覚症状がないにもかかわらず、『高血圧症』の患者さんにお薬で血圧コントロールをしてくださいというのは、今までの研究などで、これらの恐ろしい合併症の発生をある程度防ぐことが出来るからなのです。

本地洋一さん:健康年齢をより高くして、幸せな老後を送るためにも『高血圧症』は放置してはいけないということですね!

日常の食事制限、特に塩分制限や適度な運動が高血圧に良いと言われていますが、お薬なしでの血圧コントロールは可能でしょうか?

私も日常的に血圧のお薬を飲んでいますが、大切だと思いながらも結構面倒なんです!

松尾仁司院長:患者さんからは『私はこの薬をずーっと飲み続けなければならないのですか?』質問されることが良くあります。確かに運動療法とか、食事の塩分管理をきちんとするだけで血圧コントロールが可能の患者もお見えになります。そのような場合はお薬をやめることが可能です。しかし、多くの『高血圧症』患者さんは動脈硬化により血管が硬くなっていますので、食事と運動といった生活習慣の改善だけで血圧のコントロールは困難です。

吉田早苗さん:『高血圧症』の原因はやはり加齢ですか?

松尾仁司院長:おっしゃるとおりで、小学生などの子供さんは血管の弾力性が高くやわらかいため、大人と比べると血圧が低い場合が多いですが、動脈硬化が老化現象の一つと考えた場合、年をとればとるほど『高血圧症』の診断基準に当てはまる方の割合は増えてきます。疫学的には70歳以上の約70%が収縮期血圧140mmHgを上回っていると言われています。

吉田早苗さん:この続きは11月5日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。

きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/10/22/木  14:00-16:00 http://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20201022143405

聴取可能期限:2020年10月28日 15:30まで