皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

11月19日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第11回目の放送です。

心臓や血管の病気は急激に症状が悪化したり、重症化したりするケースが少なくありません。「どんな治療法があるのか?」、「急に悪化した場合どうすれば良いのか?」

「予防策として、普段の生活でできることは何か?」など、岐阜ハートセンターの松尾仁司院長とパーソナリティの本地洋一さん、吉田早苗さんが対談の中で、地域の皆様の命を守るのに役立つ情報を発信していきます。

今回も3密と飛沫対策されたスタジオからの放送でした。

今回のテーマは高血圧症に引き続き『高血圧症が引き起こす血管の病気』についてです。

本地洋一さん:前回『高血圧症』のお話の中で、『高血圧症』は別名サイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれていて、放置すると徐々に全身の血管や臓器に重大で恐ろしい病気を引き起こすということでしたが、重大で恐ろしい血管の病気とはどのようなものがあるのか具体的にお話し願えますでしょうか?

松尾仁司院長:『高血圧症』と因果関係のある血管の病気はたくさんありますが、本日は大動脈の病気についてお話しします。

心臓から全身に血液を送り出すパイプの役割を果たすのが大動脈です。大動脈は脳、消化管、腎臓などの臓器へ向けて多くの枝を出しながら、お臍の下あたりで左右に分かれます。心臓から全身に血液を送り出すパイプの役割を果たすのが大動脈です。大動脈は脳、消化管、腎臓などの臓器へ向けて多くの枝を出しながら、お臍の下あたりで左右に分かれます。

『高血圧症』の方はこの大動脈に常に高い圧力がかかります。この状態を長年放置しますと、本来弾力があり比較的やわらかい大動脈に動脈硬化が起こってきます。この動脈硬化が大動脈に起こると、大動脈は徐々に蛇行してきます。大動脈が蛇行すると、もともと大動脈の内壁に均等にかかっていた血圧が不均等になり、大動脈の壁が瘤のように膨らんでくることがあります。この病気を『大動脈瘤』といいます。

動脈の壁というのはそれほど分厚いものではないですし、動脈硬化により硬くなっているところが膨らんで『大動脈瘤』を形成した場合、『大動脈瘤破裂』の可能性も高くなります。『破裂性大動脈瘤』とも言います。大動脈が突然破裂すると、一気に血圧が低下して命を落とすこともある恐ろしい病気です。

(https://gifu-heart-center.jp/aortic_disease_treatment/)

本地洋一さん:『大動脈瘤』が破裂するかどうかは事前の検査でわかるものなのでしょうか?

松尾仁司院長:『大動脈瘤』は自覚症状なく進行するため、ほどんどの場合、偶発的に見つかることが多い病気です。

『胸部大動脈瘤』は、健康診断などでたまたまレントゲン検査を受けたとき、大動脈が拡大しているのが分かり、初めて診断される場合が多いのですが、『胸部大動脈瘤』が拡大してくると食道が圧迫されて「ものを飲み込むのが困難になる」、左反回神経(声を出したり、ものを飲み込んだりするときに使う神経)の圧迫による「かすれ声」などの症状が出る場合があります。『腹部大動脈瘤』の場合は、やせて体脂肪の少ない方などはたまたまお腹を触った際に脈を打つ『腹部大動脈瘤』に気づく場合があります。

本地洋一さん:『高血圧症』があって、『大動脈瘤』がある場合は、『大動脈瘤破裂』の危険性があるということですが、破裂を防ぐ方法はありますか?

松尾仁司院長:近年は多くの病院でCT検査を受けることが出来ます。これによって『大動脈瘤』の部位、『大動脈瘤』の大きさを正確に診断することが可能となっています。

『腹部大動脈瘤』の場合、大きさ(最大短径)が40mm、『胸部大動脈瘤』ですと50mmを超すサイズの『大動脈瘤』は破裂する危険性があり、この最大短径が大きくなるほどそのリスクも高くなることが知られています。

『大動脈瘤』治療は破裂の危険性が低い場合は血圧コントロールを厳密にして、定期的にCTやMRIでサイズをフォローします。しかしながら『大動脈瘤』サイズが大きく破裂のリスクが高いと判断した場合は何らかの侵襲的な治療を選択します。

『大動脈瘤』の治療目的は動脈瘤の破裂を予防する動脈瘤由来の末梢塞栓を予防する動脈瘤による凝固障害を予防することです。

『大動脈瘤』サイズがまだ小さく、破裂がさし迫っていない場合は、破裂リスクを回避するための内科治療を行い、破裂の可能性が増大した瘤では、外科治療を優先することが原則となります。

日常生活におきましては、散歩などの適度な運動はお勧めしますが、血圧を極端に上げる筋力トレーニングや、激しい運動は避けたほうが良いです。また過度な精神的な興奮もなるべく避けるように心掛けると良いですね。

本地洋一さん:大動脈破裂を予防するための外科的な治療についても教えてください。

松尾仁司院長:岐阜ハートセンターでは開胸あるいは開腹による人工血管置換術と、開胸あるいは開腹を行わない、カテーテルによる血管内治療(ステントグラフト内挿術)の2種類の手術療法を行っております。

『大動脈瘤』の部位や形状により方法・術後経過が異なるので、具体的には患者様それぞれに合った治療法を説明したうえで、行っています。

人工血管置換術は胸部あるいは腹部切開を行い、『大動脈瘤』へ到達し、血流を遮断して瘤を切開、正常な血管と人工血管を繋ぐ手術です。

(https://gifu-heart-center.jp/aortic_disease_treatment/#3)

ステントグラフトによる治療とは、『大動脈瘤』を直接切除することなく、動脈瘤内にステントグラフトと呼ばれる針金骨格付人工血管を挿入して破裂を予防する治療法です。8mm程度の細い管(カテーテル)内にステントグラフトを折りたたんで詰め、それを約5cmの皮膚切開で露出した足のつけねの動脈から、血管内を通して動脈瘤部分まで運んでステントグラフトを広げて留置します。『大動脈瘤』は体の中に残ったままですが、瘤には血圧が直接かからないので破裂の危険がなくなります。胸や腹を切開しないため人工血管置換術に比べ体の負担が少ないのが特徴です。

(https://gifu-heart-center.jp/aortic_disease_treatment/#4)

本地洋一さん:血圧が高い人は世の中にはたくさんお見えになりますが、そういう人たちはまずはお医者さんの指示に従ってお薬でコントロールすることが大切ということですか?

松尾仁司院長:『高血圧症』の罹病期間が長ければ長いほど、心血管系の合併症を併発する可能性が高くなることが知られています。

『高血圧症』方はたとえ自覚症状がなくても、健康年齢を延ばすためにお薬で血圧コントロールすることが重要です。

吉田早苗さん:この続きは12月10日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。

きょうもラジオは!?2時6時 | ぎふチャン | 2020/11/19/木  14:00-16:00 http://radiko.jp/share/?sid=GBS&t=20201119143300

聴取可能期限:2020年11月20日 20:08まで