『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第112弾~

2025年1月23日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年 第2回目の放送です。

本日は、いつもの松尾仁司院長ではなく、岐阜ハートセンター副院長の大久保宗則先生にお越しいただいております。

リスナーの皆さんは『フットケアの日』というのをお聞きしたことがありますでしょうか?

2010年1月、日本フットケア学会と日本下肢救済・足学会、および日本メドトロニックが糖尿病や末梢動脈疾患あるいは閉塞性動脈硬化症による足病変の予備、さらには早期診断・早期治療の啓発を目的として2月10日を『フットケアの日』に制定したと発表しました。

これに伴い、岐阜ハートセンターでも2月8日にフットの日というイベントを予定されています。

ということで、本日は岐阜ハートセンター副院長の大久保宗則先生に

『あしのお話し』をしたいただきます。

 

ところで、大久保宗則先生のご専門は循環器内科と伺っておりますが、あしの病気を循環器内科の先生が診るということが良くわからないリスナーの方も多くお見えになるのではないでしょうか?

大久保宗則先生:おっしゃるとおりで、一般的に循環器内科が扱う病気というのは狭心症や心筋梗塞、不整脈、心不全などの心臓の病気と思われている方が多いかと思います。

一方で松尾院長もこの番組でしばしばお話しすることがあるように、全身の血管というのはつながっているので、心臓の血管が動脈硬化で狭くなったり、詰まったりしている方の多くはほかの部位、例えば脳へ行く血管や、あしを栄養している動脈にも動脈硬化性の病気がある場合が多くあるのです。また、足の動脈に動脈硬化がある場合、心臓や脳の血管にも動脈硬化が起きていることが多いということが分かっています。

 

あしの動脈が動脈硬化によって狭くなったり、詰まったりして起こるあしの病気、『閉塞性動脈硬化症』では、動脈が動脈硬化によって狭くなると、血液を十分に流すことが出来ないため、筋肉は必要な酸素や栄養を受け取ることが出来ません。この状態を医学的には虚血と言います。

じっとしているときは何ともないけれども、歩いたり走ったりするとふくらはぎや太ももなどが“重たくなる”、 “しびれる”、“痛くなる”といった症状が出て、しばらく休むと症状が取れてまた歩くことが出来る。このような状態を“間欠性跛行”と言い『閉塞性動脈硬化症』の初期症状として最初に出てくることが多い症状です。

跛行とは歩行障害の一種で、かばうように歩いたり、足を引きずったりする異常歩行のことです。

 

さらに症状が進むと、安静時でも皮膚や筋肉、骨が血流不足で虚血状態を起こすようになります。皮膚が虚血状態になると色が悪くなってきて深刻化すると潰瘍(皮膚の表面が炎症を起こして崩れ、深いところまで傷ついた状態)や壊死(足の組織が死んでしまう状態)を起こすこともあります。この状態を『重症下肢虚血』と呼び、ひどい場合はあしを切断しないと命を救えない場合もあります。

したがって、この病気も早期発見、早期治療が重要となります。

ということで、岐阜ハートセンターでは健康寿命を延ばすためには、心臓の血管だけでなく全身の血管のマネジメントを行う必要があると考えてあしの外来という外来を開設しております。

本地洋一さん: 松尾院長もこの番組でよく健康寿命を延ばすためには運動習慣、特に歩くことが大切だといっておられます。

大久保宗則先生:この放送の視聴者の方は、あしを使って歩くことが健康寿命を延ばすためにいかに重要かということを良くわかっているかと思いますし、世間一般でも運動習慣の重要性が徐々に理解されてきてはいますが、実際に実行できているかというと外来の診察室でお話を伺う中ではまだまだという実感があります。

あしは第二の心臓ということを聞いたことがある方もあるかと思います。これは、脚の筋肉が血液を心臓に戻す役割を果たしていることを指します。特にふくらはぎの筋肉は、歩行や運動時に収縮と弛緩を繰り返し、血液を下半身から心臓に送り返すポンプのような働きをします。

本地さんや吉田さんは基本的には座り仕事が多いですようね!私も外来日はほぼ一日中診察室で座ったまま患者さんの診察をしています。そうすると、夕方には足がむくんでだるいと感じます。これは、あしの筋肉を使わないでずっとすわっていることによって、静脈が還流障害を起こして心臓に戻れずにあしに溜まってしまっていることによります。

吉田早苗さん: あしのむくみ対策としてはやはりウォーキングが良いのでしょうか?

大久保宗則先生: そうですね!あしのポンプ機能を維持するためには以下の方法が有効とされています。

  • 適度な運動: ウォーキングやストレッチなど、脚の筋肉を動かす運動を日常的に取り入れましょう。
  • 足のマッサージ: 血行を促進するために、足のマッサージを行うことも効果的です。
  • 足を高くする: 長時間座っている場合や寝る前に、足を少し高くすることで血液の循環を助けます。

ただ、運動不足以外の病気によりあしがむくむ場合には治療介入が必要になることもあります。

むくみとは医学的には浮腫(ふしゅ)といい、顔や手足などの末端が体内の水分により痛みを伴わない形で腫れる症候で、むくみの起こる範囲によって全身性浮腫と局所性浮腫に分けることが出来ます。

『全身性浮腫』

  • 心原性(心不全など)
  • 腎原性(腎不全やネフローゼ症候群など)
  • 肝疾患(肝硬変など)
  • 内分泌性(工場制機能低下症、クッシング症候群など)
  • 薬剤性(非ステロイド性抗炎症薬やステロイド性抗炎症薬、カルシウム拮抗薬、抗がん剤など)

『局所性浮腫』

  • 静脈性(深部静脈血栓症、血栓後症候群、静脈瘤など)
  • リンパ性
  • 炎症性(感染、アレルギー)
  • 血管神経性、血管浮腫

あしのむくみの主な原因としては、1)伏在静脈・穿通枝不全、2)機能性静脈不全(不活動、長時間座位、肥満)、3)静脈血栓後症候群といった慢性静脈不全があげられます。

本地洋一さん: 一口にあしのむくみと言っても様々な原因があるのですね!

大久保宗則先生: 岐阜ハートセンターでは、あしの外来という専門外来をおこなっています。

あしの外来を受診される患者様の訴えで多い症状は、ふくらはぎがだるい、むくみ、痛み・しびれ、こむらがえりなどです。その他には、膝の痛み、皮膚のかゆみなどもあります。

これらの症状の原因は、心臓や下肢の動脈、静脈だけではなく、整形外科や皮膚科、内分泌領域の疾患の場合もあります。

まずは、あしのむくみの原因はどこにあるのかを正しく評価することが大切です。腹部臓器や、下肢静脈の超音波検査を行い、深部静脈や腹部の静脈に閉塞や、狭窄などがないかを鑑別します。

エコノミークラス症候群や腹部臓器にガンなどの巨大な腫瘍がある場合は、静脈瘤だけを治療してももともとの原因を治療していないため、自覚症状のあしのむくみは改善されません。したがって、これらの除外診断はとても大切と言えます。

また、岐阜ハートセンターでは、心臓治療とあしの血管治療を行うと同時に、医師とフットケアチームのフットケア指導士、弾性ストッキン・圧迫療法コンダクターの資格を持つ看護師や理学療法士が、正しい歩き方の指導や足の変形に対しての靴の処方やむくみに対する弾性ストッキングや弾性包帯、ドレナージなどの圧迫指導、歩行機能の改善・温存に努めています。

『フットケア指導』

  1. ストレッチ、間接運動、筋力アップ、マッサージ
  2. 靴(履き方、選び方)、歩行(方法、距離)
  3. 圧迫療法(弾性ストッキング)
  4. 保温
  5. 爪処置
  6. 栄養指導(体重管理)
  7. メドマー

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2025年2月23日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。