『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第69弾~
2023年4月27日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第69回目の放送です。
今回の放送のテーマは『むくみ』です。
本地洋一さん: 『むくみ』と言いますと、足が腫れた状態というイメージがあるのですが、よく朝に顔がむくむなどといわれるかたもみえますよね!
『むくみ』とは医学的にはどのような状態なのでしょうか?
松尾仁司院長: 多くの患者様が足のむくみという訴えで病院を訪れます。
岐阜ハートセンターには、あしの外来という専門外来があります。
https://gifu-heart-center.jp/outpatient_footcare/
この外来には、あしの痛みはもちろん、ふくらはぎの痛み、こむらがえり、あしのしびれ、かゆみ、足の冷え、色素沈着等様々なあしの症状の患者様がこられます。
これら多種にわたる症状のうち最も訴えの多い症状があしの『むくみ』です。
あしの血管には皮膚、筋肉、骨などの各組織に酸素や栄養を運ぶ動脈と、皮膚や筋肉、骨などの各組織から老廃物や二酸化炭素を運び出す静脈があります。
『あしのむくみ』はあしの静脈やリンパの還流障害によって起こる場合が多くあります。
血液やリンパ液は空気より重たいため、日常生活で心臓より下にあることが多いあしには血液が溜まりやすいのですが、静脈には逆流を防止するための静脈弁がある上に、ふくらはぎの筋肉が静脈血を心臓に押し戻すためのポンプの役割を担っているため、これらが正常に機能している場合には血液があしに溜まることはありません。
しかしながら静脈弁が障害されて静脈が逆流するようになってしまったり、静脈自体が閉塞したり、加齢や病気などで長期間寝たきりになったり、ほとんど歩かないような生活をしていると、静脈血が還流障害を起こして心臓に戻れずにあしに溜まってしまい、これが『あしのむくみ』の原因になります。
吉田早苗さん: ほとんど歩かない生活って私たちのことですね。私などは朝履けたブーツが、夕方はあしがむくんで履けないこともあります。
松尾仁司院長: 先ほども言いましたが、ふくらはぎの筋肉は静脈の血液を心臓に汲み戻すためのポンプの働きをしているため、第2の心臓とも呼ばれています。ラジオの放送で2時から6時までずっと座っていることの多い吉田さんなどは、血液があしに溜まりやすい姿勢をとり続けているうえに、溜まった血液を心臓へ汲み戻すふくらはぎの筋肉を使うことが少ないため、朝に比べて夕方にあしがむくみやすいのだと考えられます。
本地洋一さん: 『あしのむくみ』は年齢とともに起こりやすくなるのですか?
松尾仁司院長: 加齢により血管も徐々に老化しますので動脈も静脈も徐々に弾力を失ってくる上に動脈硬化や静脈硬化は年齢とともに進行してきます。また一般的に若い方はお年を召した方に比べ活動量が多いため、若年者に比べると高齢者はあしがむくみやすい傾向にあると言えます。
逆に、若年者でむくみがある方は、何か病気が隠れている可能性があります。
本地洋一さん: 今、病気が隠れていると言われましたが、病的な『むくみ』についてもう少し詳しく教えてください。
松尾仁司院長: 『むくみ』の原因となる病気には、全身の血流を悪くするものとして、心不全をはじめとした心臓の病気があります。
また、肝臓や腎臓に何らかの障害があることがあります。
たとえば、肝硬変という肝臓の病気がある場合、血液中のアルブミンというタンパク質の量が低下するため(低アルブミン血症)、血管内の水分が血管の外の間質に漏れ出してしまいます。この間質に溜まった水分によって、全身に『むくみ』を生じる場合があります。
他にも、お腹の中に血管を圧迫するような腫瘍などがある場合は、血流が阻害されることによる『あしのむくみ』が起こりますし、あしの静脈にある弁に障害がある場合、エコノミークラス症候群のように静脈内に出来た血栓が血流を阻害して『あしのむくみ』を起こす場合もあります。
『あしのむくみ』の原因が運動不足によるものである場合は、積極的に足の筋肉を使うことが治療になると言えますが、何らかの基礎疾患が『むくみ』の原因である場合はその原因となる基礎疾患をしっかりと治療する必要があります。
吉田早苗さん: 私の場合『あしのむくみ』が夕方に起こる他にも、少し深酒をした翌朝などは顔やまぶたが腫れぼったくなってしまうのですが『むくみ』これものひとつですよね!
顔のむくみは朝に起こる理由は何かあるのでしょうか?
松尾仁司院長: 先ほど、重力の影響で心臓よりも低い位置にある場所に血液が溜まりやすく、このことが『むくみ』の原因の一つだというお話をしました。
昼間起きている時、あしは心臓よりも下にあることが多いため、あしに血液が溜まりやすく、頭や顔は心臓よりも高い位置にあるため血液が溜まりにくいと言える半面、夜寝ている時頭や顔は、心臓とほぼ同じ高さになるため、昼間に比べて頭や顔の静脈血流は若干低下すると言えます。飲みすぎた次の日、朝は飲酒による脱水のせいで血管内の水分が血管外に溜まって顔がむくんでいるのだと考えられます。
本地洋一さん: いずれにしても、『むくみ』は健康ではない状態のサインの一つであると考えられるということですね!
女性に多い病気に下肢静脈瘤があると聞いたことがあります。この病気もむくみの原因になったりするのですか?
先ほど岐阜ハートセンターにはあしの外来があるというお話でしたが、そこでは静脈瘤治療も可能なのでしょうか?
松尾仁司院長: 岐阜ハートセンターのあしの外来を受診される患者様の約半数は、静脈瘤を含めた機能性の静脈不全です。
静脈瘤とは静脈が拡張して“ぼこぼこに膨らむ”病気です。通常、柔らかい青紫色のこぶが下腿にミミズのように見られます(https://gifu-heart-center.jp/varicose_veins/)。
太い深部静脈が閉塞したり、静脈弁が壊れて静脈に逆流が起こることにより、静脈の還流圧が高くなることによって、その結果静脈が蛇行し、ぼこぼこに膨らんでしまう病気です。
症状としては、下肢静脈の流れが悪くなる(うっ血)ため、『あしのむくみ』、見た目が気持ち悪い、あしがだるい、こむら返り、痛みやかゆみなどがあります。
直接命に関わる病気ではありませんが、年単位で悪化していくこと、血栓を伴ったりすると赤くはれたり(血栓性静脈炎)、ひどくなれば皮膚色が浅黒くなり場合によっては皮膚潰瘍ができ、そこから出血や感染を引き起こす可能性もあります。
静脈瘤の治療は瘤のサイズにより、保存的治療と手術などの侵襲的治療があります。クモ状、糸状静脈瘤の場合の治療法は通常弾性ストッキンによる圧迫保存療法となります。
静脈瘤のサイズが3mm以上の場合は静脈を糸で縛って静脈瘤を起こした静脈を閉塞させる高位結紮術、レーザーやラジオ波によって血管内を焼き、静脈瘤を起こした静脈を閉塞させる血管内焼灼術、静脈内にカテールを挿入し、そこから血管内に糊を注入することによって静脈瘤を起こした静脈を詰めてしまう血管内塞栓術などがあります。
1. 静脈内へカテーテルを挿入します
2. エコーガイド下に、カテーテルを操作します
3. カテーテルから糊を押し出します
4. 糊が、静脈内で血液と凝固します
5. 挿入部に絆創膏を貼り終了です
この3つの侵襲的治療はいずれも局所麻酔で行う比較的容易な手術で、岐阜ハートセンターでは、日帰りまたは1泊2日で行っています。
また、再発率が3%~5%と極めて低い治療法であるため、患者様の満足度の高い治療と言えると思います。
『あしは全身の病気の鏡といえます』
今までお話ししたあしの様々な症状は、全身疾患の一番最初に出る症状であることがあります。
たとえは、あしの静脈不全による『あしのむくみ』を主訴に当院のあしの外来を受診された患者様には閉塞性動脈硬化症や狭心症など動脈系の疾患が隠れていることもしばしばあります。
本地洋一さん: なるほど、『むくみ』には運動習慣をつくることによって改善するむくみと基礎疾患によるむくみがあり、基礎疾患がある場合は、しっかりと治療することがひつようである。
また、静脈に異常がある場合動脈にも何らかの異常があることが多いということですね。
吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年5月11日(木)にお送りいたします。
心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。