『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第79弾~

2023年9月14日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 第79回目の放送です。

本地洋一さん: 今回の放送はスタジオに岐阜ハートセンター副院長の富田伸司先生にお越しいただきました。

テーマは『あしのむくみについて』 富田先生にお話しを伺いたいと思います。

あしのむくみというのはよく聞くワードですが、素人ながらにあしのむくみは多種多様で、その原因も色々あるという印象です。

そのあたりを詳しくお教えいただいてもよろしいでしょうか?

富田副院長: むくみとは医学的には浮腫(ふしゅ)といい、顔や手足などの末端が体内の水分により痛みを伴わない形で腫れる症候で、むくみの起こる範囲によって全身性浮腫と局所性浮腫に分けることが出来ます。

『全身性浮腫』

・ 心原性(心不全など)

・ 腎原性(腎不全やネフローゼ症候群など)

・ 肝疾患(肝硬変など)

・ 内分泌性(工場制機能低下症、クッシング症候群など)

・ 薬剤性(非ステロイド性抗炎症薬やステロイド性抗炎症薬、カルシウム拮抗薬、抗がん剤など)

『局所性浮腫』

・ 静脈性(深部静脈血栓症、血栓後症候群、静脈瘤など)

・ リンパ性

・ 炎症性(感染、アレルギー)

・ 血管神経性、血管浮腫

あしのむくみの主な原因としては、1)伏在静脈・穿通枝不全、2)機能性静脈不全(不活動、長時間座位、肥満)、3)静脈血栓後症候群といった慢性静脈不全があげられます。

本地洋一さん: 富田先生は、静脈瘤治療がご専門だと伺いましたが、下肢の静脈瘤もあしのむくみの原因疾患なのでしょうか?

富田副院長: 下肢静脈瘤とは足の静脈が拡張して“ぼこぼこに膨らむ”病気です。

通常、柔らかい青紫色のこぶが下腿にミミズのように見られます(https://gifu-heart-center.jp/varicose_veins/)。

太い深部静脈が閉塞したり、静脈弁が壊れて静脈に逆流が起こることにより、静脈の還流圧が高くなることによって、その結果静脈が蛇行し、ぼこぼこに膨らんでしまう病気です。症状としては、下肢静脈の流れが悪くなる(うっ血)ため、あしのむくみ、見た目が気持ち悪い、あしがだるい、こむら返り、痛みやかゆみなどがあります。

直接命に関わる病気ではありませんが、年単位で悪化していくこと、血栓を伴ったりすると赤くはれたり(血栓性静脈炎)、ひどくなれば皮膚色が浅黒くなり場合によっては皮膚潰瘍ができ、そこから出血や感染を引き起こす可能性もあります。

本地洋一さん: 一口にあしのむくみと言っても様々な原因があるのですね!

富田副院長: 岐阜ハートセンターでは、毎週金曜日の午前中にあしの外来という専門外来をおこなっています。

あしの外来を受診される患者様の訴えで多い症状は、ふくらはぎがだるい、むくみ、痛み・しびれ、こむらがえりなどです。その他には、膝の痛み、皮膚のかゆみなどもあります。

これらの症状の原因は、心臓や下肢の動脈、静脈だけではなく、整形外科や皮膚科、内分泌領域の疾患の場合もあります。

まずは、あしのむくみの原因はどこにあるのかを正しく評価することが大切です。腹部臓器や、下肢静脈の超音波検査を行い、深部静脈や腹部の静脈に閉塞や、狭窄などがないかを鑑別します。

エコノミークラス症候群や腹部臓器にガンなどの巨大な腫瘍がある場合は、静脈瘤だけを治療してももともとの原因を治療していないため、自覚症状のあしのむくみは改善されません。したがって、これらの除外診断はとても大切と言えます。

 

本地洋一さん: リスナーの皆様を始め、我々一般の人も血管には動脈と静脈があることはご存じだと思います。このコーナーでも動脈硬化というワードはよく出てきますが、静脈の病気に関してはあまりとりあげられていません。

富田副院長: 欧米では足病医という専門の医師が古くからありますが、本邦では足病医という専門医制度はなく、多科の専門医が協力してあしの病気を治療しているのが現状です。

岐阜ハートセンターは、循環器の専門病院であるため、皮膚科、整形外科、神経内科など、他診療科の疾患に関しては必要に応じて連携する専門病院の医師と協力して治療にあたっています。

また、あしの症状は、毎日の生活の影響によるものが実は多く、見過ごされがちです。

岐阜ハートセンターでは、心臓治療とあしの血管治療を行うと同時に、医師とフットケアチームのフットケア指導士、弾性ストッキン・圧迫療法コンダクターの資格を持つ看護師や理学療法士が、正しい歩き方の指導や足の変形に対しての靴の処方やむくみに対する弾性ストッキングや弾性包帯、ドレナージなどの圧迫指導、歩行機能の改善・温存に努めています。

『フットケア指導』

1. ストレッチ、間接運動、筋力アップ、マッサージ

2. 靴(履き方、選び方)、歩行(方法、距離)

3. 圧迫療法(弾性ストッキング)

4. 保温

5. 爪処置

6. 栄養指導(体重管理)

7. メドマー

一方で、これらのフットケア指導は日本では保健償還されていないのが現状です。

このため、慢性静脈不全でお困りの患者様にフットケアを行うことにより、どれだけの効果があるのかを科学的に証明していくことが今後の課題だと考えています。

吉田早苗さん: 次回のハート相談所は2023年9月28日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。