皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

2021年2月11日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第16回目の放送です。

岐阜県に発令された緊急事態宣言により年末年始に比べて新型コロナウイルス感染の新規患者数は徐々に減少し、病床利用状況も改善してきているように思えますが、まだまだ予断を許さない感じです。したがいまして2021年新年の第3回目の放送は、前回に引き続きスタジオではなく、岐阜ハートセンター内から携帯電話での出演になりました。

今回の放送のテーマは『メタボリック症候群』についてです。

本地洋一さん:『メタボリック症候群』最近よく耳にする単語で、どっちかというと体重の多めの方に向けた戒めのような印象を受けています。そこで先生、そもそも『メタボリック症候群』というのはどのように理解すればよろしいでしょうか?

松尾仁司院長:『メタボリック症候群』、世の中ではメタボと略されてずいぶん浸透してきています。メタボ対策とかよく耳にするのではないでしょうか!

厚生労働省のホームページを見ますと、『メタボリック症候群』とは?

内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態です。単に腹囲が大きいだけではメタボリックシンドロームにはあてはまりませんとあります。

『本地洋一のハート相談所』でも昨年の11月に高血圧症のお話しを2回しましたし【今日もラジオは⁉2時6時】に出演しました~第9弾~ | | 岐阜ハートセンター (gifu-heart-center.jp)【今日もラジオは⁉2時6時】に出演しました~第10弾~ | | 岐阜ハートセンター (gifu-heart-center.jp)、そのあと『高血圧症が引き起こす血管の病気』【今日もラジオは⁉2時6時】に出演しました~第11弾~ | | 岐阜ハートセンター (gifu-heart-center.jp)についてもお話ししました。

今年に入ってからは、前回の放送で『脂質異常症』を取り上げて、『高LDL血症』が動脈硬化のもととなる粥腫形成の原因になると行ったお話をしました【今日もラジオは⁉2時6時】に出演しました~第15弾~ | | 岐阜ハートセンター (gifu-heart-center.jp)

そこで、『メタボリック症候群』を視聴者の皆様に正しく理解していただくうえで、今回は『肥満』についてのお話からをしましょう。

『肥満』とは一般的には、正常な状態に比べて体重が多き状況や体脂肪が過剰に蓄積したことを言いますが、脂肪がつく場所によって2つのタイプがあります。

それは『皮下脂肪型肥満』『内臓脂肪型肥満』です。

皮下脂肪と内臓脂肪はそれぞれ違った性質を持っています。皮下脂肪はお腹をつまむとわかる脂肪で皮膚のすぐ下に溜まる性質があります。一方で内臓脂肪はお腹の中の臓器、腸の回りの腸間膜につく脂肪なので体の表面からはわかりにくいのですが、いわゆるポッコリお腹の方は内臓脂肪が多くついていると言われています。

またこの二つの脂肪はその合成と分解の性質にも違いがあります。

皮下脂肪は脂肪の合成と分解に時間がかかるため内臓脂肪に比べ、つきにくく、取れにくい脂肪と言えます。預金にたとえると定期預金ですね!

一方で内臓脂肪はその合成と分解が皮下脂肪に比べてさかんに行われるため、摂取した栄養に余分があれば溜まりやすい脂肪と言えます。

お金にたとえると、お財布の中のお金で出し入れが容易であると言えるかもしれません。

このため、内臓脂肪は血液中の脂質と密接に関係してきます。つまり、内臓脂肪が増えると血液中の中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減るということになります。

つまり、内臓脂肪が多い方は脂質異常をきたしやすいため、動脈硬化を起こしやすく、狭心症や心筋梗塞、急性大動脈解離などの心血管疾患や脳卒中の命に関わる恐ろしい病気になりやすいと言えます。

『肥満』と言われる方の中で糖尿病、高血圧症、高脂血症を持っていない人は20%で、この場合は心血管疾患にかかるリスクは高くありません。しかし残りの80%の方は糖尿病、高血圧症、高脂血症を1つないしは複数もっておられると言われています。

糖尿病、高血圧症、高脂血症に加えて『肥満』がある方は、これらのリスクを全く持っていない方に比べ心血管疾患や脳卒中と言った恐ろしい病気にかかる確率が35倍高いと言われています(死の4重奏)。

本地洋一さん:『内臓脂肪型肥満』の方は血液中に脂肪が溶け込みやすくなって、結果として身体にとって悪さをしやすくなるということですが、『皮下脂肪型肥満』の方は大丈夫なのでしょうか?

松尾仁司院長:皮下脂肪型の肥満は内臓脂肪型の肥満に比べて、心血管疾患のリスクは低いと言われています。しかしながら皮下脂肪がすごく多いにもかかわらず内臓脂肪が全くないなどという方は多くありません。定期預金(皮下脂肪)がたくさんある人はやはりお財布の中にもたくさんお金(内臓脂肪)があると考えていいのではないでしょうか!

本地洋一さん:私もメタボ体型で、努力はしているのですがどうしても長続きせずにリバウンドを繰り返してしまいます。先生は多くの患者さんを診られていると思いますが、『肥満』の方に対するアドバイスをお願いします。

松尾仁司院長:大昔は食料を得るために人類は大変な苦労をしていました。現代ほど容易に十分な食べ物がなく、また栄養価の低い食料しかなかった時代には飢餓に対する身体の防衛反応として人類は脂肪を蓄えることが出来るようになりました。

最近は一部の国を除いては高カロリーで高脂肪な食料が、容易にとれるため、食べ物を手に入れるために遠くまで出かけたり,戦ったりすることはありませんし、飢餓状態になることもまずありません。逆に栄養の取り過ぎ、脂肪の蓄えすぎによって健康を損なう時代になってきています。

『メタボリック症候群』特に『肥満』は生活習慣を改善することが非常に重要です。主に食習慣の改善と運動習慣の継続です。無理なダイエットは長続きしません。食習慣の改善で言うとよくかんでゆっくり食べる、夕食は眠りにつく3時間前までに済ませるなどから改善してはいかがでしょうか! あと、運動も重要です。これも自分一人でストイックにトレーニングをするよりも、夫婦一緒にとか仲間と一緒におおらかな気持ちで、無理せずに楽しんで運動することが、長続きのこつだと思います。

本地洋一さん:10日に1回頑張るよりも毎日の積み重ねが大切だと言うことですね。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2021年2月18日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。