皆様、ぎふチャンのラジオ番組で『きょうもラジオは!? 2時6時 』ってご存じでしょうか?

2021年3月4日午後3時30分、『本地洋一のハート相談所』第18回目の放送です。

岐阜県に発令された緊急事態宣言は2月末に解除、3月になり岐阜県の一日当たり新型コロナウイルス新規感染者数も10人を下回るようになってきました。しかしながら、一般へのワクチン接種が始まっておらず、まだまだ予断を許さない感じです。

2021年第5回目の放送は、ぎふチャンの入り口で検温をして、3密と飛沫対策されたスタジオでの放送です。

今回の放送のテーマは『タバコと心臓病』についてです。

本地洋一さん:タバコが体に良いと思っている方はいないと思いますが、医学的にみてタバコはどのような病気を引き起こすのでしょうか?

松尾仁司院長: 喫煙はいろいろな病気と関連していると言われています。もっとも関連が強いと言われているのが、がんです。肺がん、食道がん、胃がんなどは喫煙とリンクしていることが分かっています。その次に関連性が強く言われているのが心臓病です。

つまり、日本人の死亡原因の一位(がん)と二位(心臓病)はいずれも喫煙が影響しているこということです。

本地洋一さん:がんと心臓病はタバコを吸わない人もかかる病気だと思いますが、タバコを吸うことによってこれら恐ろしい病気にかかりやすくなるということでしょうか?

松尾仁司院長:疫学調査という言葉は聞いたことがありますでしょうか?疫学とは,人集団における患者発生の分布を観察することにより,主として疾病の原因を究明しようという学問です。この調査は日本に限らず世界中で行われています。

この調査によって一般の方々では喫煙者はタバコを吸わない人に比べてがんや心臓病の発生率が高いことが分かっています。

心臓病についての調査からは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患では、男性の場合喫煙者は非喫煙者に比べ2.8倍、女性で2.2倍多く罹患すると言われていますし、また心臓突然死に至っては男性で10倍、女性で5倍ということが疫学的研究で分かっています。

本地洋一さん:先生は実際に臨床の場で多くの心疾患患者さんを診ているわけですが、タバコを吸う人に顕著に表れる症状で何かお気づきになる症状はどのようなものがあるのでしょうか?

松尾仁司院長:医学的に申しますと、喫煙は身体の中に酸化物質を増やします。これが血管の内皮細胞を傷つけたり、動脈硬化の原因となる『LDL(悪玉)コレステロール』『超悪玉コレステロール』に変化さることが知られています。

1月28日の放送で、『LDL(悪玉)コレステロール』動脈硬化の原因となるというお話をしましたが、喫煙は『LDL(悪玉)コレステロール』がもつ血管障害性にさらに拍車をかけてしまうということなのです。

(https://gifu-heart-center.jp/publication-blog/radio_gifu_0128/)

本地洋一さん:喫煙は血圧にも影響するということを聞いたことがあるのですが・・・

松尾仁司院長:その通りです。タバコにはニコチンが多く含まれていることは皆さんご存じだと思います。タバコを吸うとこのニコチンの血中濃度が上がります。そうなると血管平滑筋に攣縮(いわゆるけいれん)が起こりやすくなったり、血液の凝固能を上げて血が固まりやすくなるといった心臓にとってあまりよくない生理作用を引き起こすことも知られています。

手足の末梢血管が攣縮を起こすと血管抵抗が上がるため、血圧は上昇します。つまり高血圧の方は喫煙によりさらに血圧が上がってしまうということになります。

このため、WHOや日本高血圧学会は禁煙を高いレベルで推奨しています。

本地洋一さん:タバコの中にはニコチンだけでなく、身体にとって有害な物質が多く含まれていて、喫煙によってそれらが身体に入ることによって『LDL(悪玉)コレステロール』『超悪玉コレステロール』に変化させて動脈硬化の進行を早めたり、血管をけいれんさせたりして様々な悪さをするということですね。

松尾仁司院長:その通りです。喫煙が身体に及ぼす悪影響というのは医学的に既に十分証明されていて日本循環器学会の中でも、禁煙を市民にしっかり啓蒙していこうという運動が既に行われています。

本地洋一さん:ということは、禁煙をすることによって様々な病気を改善したり予防することにつながるということでしょうか?

松尾仁司院長:『ブリンクマン指数』というものがあります。これは一日に吸うたばこの本数と喫煙年数をかけたもので、例えば毎日1箱(20本入 り)を20歳から吸っている40歳の人は、20本×20年=400となります。 この数値が400を超えると肺がんを発症する危険性が高くなり、600以上は肺がんの高度危険群といわれています。

『ブリンクマン指数』が1000を超える人は手遅れか?禁煙でその危険性はへらすことができるか?という疑問ですが、その答えは手遅れではなく、禁煙により、健康被害を減らすことが出来るです。

なぜなら、先ほどお話ししたような喫煙が身体に及ぼす悪影響のなかで『LDL(悪玉)コレステロール』『超悪玉コレステロール』に変化させて動脈硬化の進行を早めたり、ニコチンが血管をけいれんさせて血圧を上げたりすることなどは、タバコを吸うたびに毎回起こってくる急性効果です。禁煙によって、この急性の反応を起こさないにようにすることで、動脈硬化の進行を抑えたり、血圧の上昇を起こりにくくすることが可能だからです。

今、この放送を聞いておられるリスナーの方もご自分の『ブリンクマン指数』が高いからと言って悲観することなく、長く元気で幸せな生活を続けていくために禁煙をすることをお勧めします。

本地洋一さん、吉田早苗さん:“俺は死んでもいいからタバコを吸うんだ”なんて方をたまにお見掛けすることがありますが・・・

松尾仁司院長:副流煙という言葉を聞いたことがあると思います。喫煙をすると言うことは近くにいるご家族などにも悪影響を与えることが分かっています。受動喫煙という言葉で言われていますが、疫学調査では隣の人が喫煙する煙を吸うことによってもがんや心臓病のみならず、乳幼児突然死症候群の危険度が上がることが知られています。

本地洋一さん:タバコを吸うことは身体に悪いから禁煙したいと思って見える方は多いと思います。とはいえ、禁煙って自分一人ではなかなか続かないのが現状ではないでしょうか?

松尾仁司院長: 岐阜ハートセンターでは日々心臓病を診断し治療しています。狭くなったり、詰まったりした血管をカテーテルや手術で治すだけでなく、病気の進行を抑制し、再発防止につなげることは大変重要であると考えています。そのプロモーションの一つとしてタバコを吸われる患者さんには禁煙をお勧めしています。

本地さんが言われる通りで、私が診ている患者さんの中にも禁煙を決意して何度も挑戦しては挫折している方もお見えになります。

近年、岐阜ハートセンターのみならず、多くの病院で『禁煙外来』を設けています。

そこでは様々なタイプのお薬を使って体の中のニコチン濃度を調整しながら徐々に減らしていって、最終的に体の中にニコチンを取り込まないでも平気でいられるようにしていく治療などを行い、禁煙のお手伝いをしています。

(https://gifu-heart-center.jp/kinengairai/)

ここで行われる禁煙治療は保険診療の範疇で受けることが出来ますので、ご自分だけでは禁煙が難しいと思っている方は一度受診してみてください。

本地洋一さん:禁煙をすると言うことはタバコを吸われる方ご自身のことだけでなく、ご自分の周りの大切な方々への健康被害をなくし、幸せな生活をするためにも非常に重要であるということが良くわかりました。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2021年3月18日(木)にお送りいたします。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。