『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第57弾~

2022年10月27日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』 今年18回目の放送です。

今回の放送のテーマは『高血圧のタイプ』についてです。

本地洋一さん:『高血圧』については、このコーナーでも何度かお話しいただいていますが、

本日はどのようなことをお話ししていただけるのでしょうか?

松尾仁司院長: 今までこのコーナーでは:『高血圧』の診断基準とか、『高血圧』を放置した場合どのような病気を発症する可能性があるのか等のお話をしてきました。

『高血圧』はCommon diseaseともいわれており、70歳以上の約40%の方が、『高血圧』の診断基準に当てはまることが知られています。

本日は、初めに『高血圧』にはいろいろなタイプがあるということからお話ししたいと思います。

健康診断や、病院を受診した際に血圧を測定しますが、『高血圧』とは一般的には心穏やかに安静にしているときの上の血圧が常に140mmHg、または下の血圧が90mmHgを超えているときに『高血圧症』という診断をします。

ただ血圧というのは、季節や一日のうちの時間帯、精神状態等によって変動します。

例えば、怖い先生を目の前にした場合等にも血圧が一時的に急上昇することがあります。

吉田早苗さん: うちの母がまさにそれです!

『白衣高血圧とは?』

白衣高血圧は、診察室や医療現場で測定した血圧が高血圧(140/90mmHg)であっても、診察室外血圧が正常息血圧(家庭血圧:135/85mmHg未満など)を示す状態です。

吉田さんのお母様がまさにこれで、診察室で医師や看護師を目の前にして血圧を測定すると、“血圧が高かったらどうしよう、薬を飲めとかいわれるかも?”などと心配や不安を感じた場合にお家でリラックスした状態で測った血圧よりも高くなる方がお見えになります。診察室血圧で『高血圧』と診断された患者様の15-30%が白衣高血圧に相当し、その頻度は高齢者で増加すると言われています。

本地洋一さん: 以前に『高血圧』を放置すると心臓や腎臓、脳などに恐ろしい病気を起こすリスクが高いと教えていただきましたが、精神的な不安や緊張で診察室内での血圧が高いだけの『白衣高血圧』も同じように予後を悪くするのでしょうか?

松尾仁司院長: 『白衣高血圧』は診察室外血圧も高い通常の『高血圧』と比較した場合、心肥大、動脈硬化、慢性腎臓病などの臓器障害や、脳梗塞、心筋梗塞などの発症は少ないと言われています。しかし、全く良性というわけではなく、『白衣高血圧』は将来的に『高血圧』に移行し、長期的には脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントの発生リスクを高めると言われているため、」

したがって、『白衣高血圧』と診断された場合には、降圧薬治療は必要ありませんが、生活習慣の是正などの健康管理が必要となります。

『白衣高血圧』と全く逆のパターンのもあります。

例えばお家にある血圧計で、朝に血圧を測った時には高くても、昼に病院の診察室で測ると正常の範囲である場合があります。

『仮面高血圧とは?』

診察室血圧が正常血圧(140/90mmHg未満)であっても、診察室外の血圧が高血圧(家庭血圧:135/85mmHg以上など)を示す状態です。仮面高血圧は、正常息血圧を示す一般の方の10-15%、降圧治療中の高血圧患者の30%にみられると言われています。

患者様の中には、お家の血圧計が故障しているとお考えになる方もお見えで、中には診察室にお家の血圧計を持ってこられる方もおられました。

本地洋一さん: 先ほどの『白衣高血圧』は予後がそれほど悪くないとのお話でしたが、『仮面高血圧』の予後はいかがでしょうか?

松尾仁司院長: 『仮面高血圧』の代表的なものに朝起きて1時間以内に測る血圧が高い『早朝高血圧』があります。この『早朝高血圧』は脳卒中や心筋梗塞などの発症に強い因果関係があり、予後が良くないということがわかっています。

その他、正常域血圧やと比較して、代謝異常を伴いやすく、左室肥大や頸動脈肥厚、無症候性脳血管障害などが進行しやすいと言われています。

したがって、『仮面高血圧』と診断された場合は、診察室外血圧を指標として、降圧薬治療を含む血圧管理が必要となります。

本地洋一さん: 一口に血圧コントロールといっても、季節や時間帯によって高くなったり低くなったりする血圧を常に正常息に保つようにコントロールをするのは難しいですよね!

『血圧コントロールは何故必要?』

2019年高血圧学会が出したガイドラインによりますと、40歳以上の方では、血圧が高いほど、心血管イベントの発生率が高く、特に若い方の『高血圧』程その傾向が強いとされています。

たとえば、40~64歳の年齢層でみますと、収縮期血圧が180mmHgを超える方は、血圧が120mmHgの方に比べて心筋梗塞、大動脈解離、脳卒中といった恐ろしい病気にかかる確率が約10倍高くなることが報告されています。

一方で、『高血圧』の患者様に対してお薬などで血圧コントロールが出来た場合は、これらの心血管イベントの発生率が減少することも分かっています。

その他、『高血圧』の影響はまず、血管の壁が弱い細い血管に現れるため、細動脈と呼ばれる細い血管が多い臓器ほど早く障害されます。具体的には脳や腎臓、目(網膜)などです。

血圧が高いこと自体では、特に自覚症状はありませんが、『高血圧』の状態が5年、10年、15年と長く続いた場合には脳卒中、腎硬化症などの恐ろしい病気にかかる頻度が徐々に増えていくことが知られています。

健康診断で、必ず血圧測定を行うのは『高血圧』をいち早く発見して、治療することにより将来恐ろしい心血管イベントを予防するためなのです。

『高血圧』の降圧薬治療をする場合、我々医師は、患者さんご自身に測っていただいた家庭血圧をみながらお薬の種類や量を調整しています。しかしながら、患者様の中にはお薬に対する反応が悪かったり、過敏すぎたりする方もお見えになります。

この場合患者様に24時間血圧計を装着していただき、血圧の日内変動をより厳密に把握して内服薬の調整をしています。

近年はこの1日の血圧変動を踏まえたうえでの血圧コントロールを推奨する医師もお見えになります。

近い将来、心拍数や酸素飽和度のみならず、血圧もモニター可能なスマートウォッチなどの手軽なウェアラブル機器を用いて血圧の変動を加味したよりきめ細やかな『高血圧』治療が可能となってくるのではないでしょうか?

吉田早苗さん:ありがとうございました。また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などがございましたら、番組までドシドシとお寄せください。