『きょうもラジオは!? 2時6時 』~第35弾~

2021年11月25日午後2時30分、『本地洋一のハート相談所』第35回目の放送です。

本地洋一さん:本日のテーマは岐阜ハートセンターの専門外来です。

そもそも専門外来とは何か?からお話しください。

松尾院長:専門外来をウィキペディアで検索すると、『ある疾患または症状に対して、専門的な診察・治療を行う専門の外来科を指す。また、診療科よりも更に細分化されたものを指すこともある』とあります。

岐阜ハートセンターは、循環器の専門病院で循環器疾患の患者様を主に診ているわけですが、一概に循環器疾患と言っても、中には特に専門的に手間をかけないと状態が改善しない、また改善した状態を維持できない疾患もあります。その代表的な病態に心不全があります。

心不全とは日本循環器学会・日本心不全学会の合同ガイドラインによりますと、『なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的、あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群』とあります。

わかりやすく言いますと、心不全とは『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』です。

そもそも心不全の患者様は心臓の機能に何らかの障害が生じた結果出現するため、このコーナーで以前にお話しした心臓弁膜症、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心臓病、解離性大動脈瘤などの大動脈疾患、弁膜症、不整脈など様々な要因によって惹き起こされる病態なのです。

岐阜ハートセンターでは、これら心不全の原因となる弁膜症や虚血性心疾患、不整脈などを手術やカテーテル治療、アブレーションによって侵襲的に治療していますが、それだけでは治療後の良い状態を長期にわたって維持することはなかなか困難なのが現実です。

この心不全という病態をお持ちの患者様は重症になってくると、たとえお薬などである程度コントロールしていても、わずかな環境の変化や外的要因によってバランスを崩されて状態が悪化することがあります。

このような患者様に対して、岐阜ハートセンターでは心不全専門外来という専門の外来でバランスを崩さないようにきめ細かく丁寧に患者様をケアしていくことを行っています。

https://gifu-heart-center.jp/outpatient_heart_failure/

病院に入院中であれば、患者様が内服している薬の種類や量ばかりでなく接種している水分量や塩分量などを厳格にコントロールすることが可能です。

しかしながら、退院されてお家に帰ると、患者様の尿量や呼吸状態、足のむくみなどを観察しながらの水分管理や内服薬を調整することは極めて困難となります。したがって、ついつい水分や食事を取りすぎたり無理な運動や仕事をしたり、お薬を飲み忘れたりして心不全が再び悪化してしまうことがありがちです。

心不全専門外来では、心不全のことを専門的に勉強して認定資格を持った看護師や心不全療養指導士と呼ばれる資格を持った専門スタッフが、心不全が再発する様々な要因をきめ細かくチェックし、その情報をもとに医師がお薬の処方を調整、運動処方や生活指導を行っています。

本地洋一さん:つまり岐阜ハートセンターの心不全外来では、重症心不全の患者様に対して、その原因となる病気の治療とともに、その後、良い状態を長く維持していくために、心不全専門外来で専門スタッフと医師が協力して一人一人その状態を診ながら、日常生活指導やお薬の処方をきめ細かく調整しているということですね。

松尾院長:病院に入院して心不全の原因となる疾患を外科手術やカテーテル治療によって治療して良くした状態を退院後も長く維持していくことは、患者様ご自身だけでは意外と難しいという現実に直面します。したがって、患者様に長く元気に生活を続けていただくために心不全専門外来でサポートし、再発防止や良い状態を維持し続けることは、循環器疾患をお持ちの患者様にとって大変重要だと考えています。

本地洋一さん:岐阜ハートセンターの専門外来は心不全外来のほかにはどのような専門外来がありますか?

松尾院長:一般的にはあまりなじみがないかもしれませんが、『あしの外来』という専門外来があります。

https://gifu-heart-center.jp/plastic_surgery/

足はただ歩くためでなく、非常に大切な役割を担っています。足は身体の中で心臓からもっとも遠くにあり、しかも身体の一番下に位置します。

そのため、血液を送り込むにも返すにも大変な力が必要で、心臓のポンプ力だけでは不十分なのです。そこで、このポンプを補ってくれるのが、歩くという運動です。歩くことは、足だけなく下肢の形をさまざまに変化させ、筋肉を伸び縮みさせ、血液の流れをよくします。

心臓の働きを助けるポンプ、それが足の大きな役目の一つで、足が第二の心臓といわれるのはこのためです。

岐阜ハートセンターの『あしの外来』では、形成外科の菰田医師が中心となって、あしのしびれや冷え、痛み、むくみ、変形や色の変化、できもの、傷・壊疽など、あし(股関節から足部)に関する症状すべてを診察しています。

7000歩/20分の歩行を継続することが生命予後によいと言われています。結局、歩くことが長生きの秘訣であることは今も昔も変わりません。ただ、それには一生涯健康に歩くための「あし」という道具を維持する必要があります。当外来ではその「あし」を守りたいと考えております。岐阜ハートセンターの『あしの外来』ではまず診察と検査を行い、さまざまな症状の原因を鑑別します。必要に応じてカテーテル治療や手術療法も行っております。しかし、それだけが治療とは考えておらず、正しい歩き方の指導やあし変形に対しての靴・中敷き・装具の作成、むくみに対する弾性着衣やドレナージなどの圧迫指導も行い、歩行の改善と維持に努めています。また、明らかに整形外科や神経内科など、他診療科の疾患と診断した場合は連携する専門病院へご紹介をさせていただきます。

本地洋一さん:岐阜ハートセンターにはあしの静脈瘤の専門外来があるようですが、これはどのような外来なのでしょうか?

松尾院長:下肢静脈瘤外来があります。静脈瘤とは、足の表面の静脈が拡張して“ぼこぼこに膨らむ”病気です。通常、柔らかい青紫色のこぶが下腿にミミズのように見えます。

下肢静脈瘤の多くは、直接命に関わる病気ではありませんが、重症になると潰瘍形成し感染の原因となったり、静脈塞栓の原因ともなりうることがありますので、静脈瘤の専門外来できちんと診断して適切に治療をすることが重要だと考えています。

https://gifu-heart-center.jp/varicose_veins/

本地洋一さん:あと、TAVI外来という聞きなれない専門外来もあるようなのですが、これはどのような専門外来なのでしょうか?

松尾院長:TAVIとは経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve implantation)のことで、大動脈弁狭窄症という病気に対する治療法の一つです。

大動脈弁狭窄症は心臓弁膜症の中でも非常に頻度の高いものの一つです。

この病気は、心臓の出口である大動脈弁が経年劣化により、動脈硬化性変化を受けて石灰化の進行や劣化により、開きが悪くなるものです。水道のホースで考えると、ホースの先をつぶさない状態ではホースは柔らかい状態ですが、先端をつぶす、すなわち、出口を狭くするとホースはパンパンで固くなることは皆さんご存じと思いますが、このように心臓に高い負荷がかかる状態です。

この状態が悪化すると、心拍出量の低下がおこり、心不全、失神、胸痛が出てきます。

心不全で1-2年、失神で2-3年の予測寿命とされている恐ろしい病気です。

従来、大動脈弁狭窄症に対する治療は全身麻酔下で外科的に開胸して人工心肺を使った弁置換術が第一選択とされてきました。この治療法の手術死亡率は日本では平均2%程度ですが、健康長寿社会となった現代では、高齢者の治療が増加傾向にあります。その結果、開胸するような大手術によって体力を落として寝たきりになってしまうと判断される患者様や、リスクが高くて手術を受けることが出来ないと判断される方が増加するということになります。

このような、開胸での手術がハイリスクと思われる患者様に対して、より低侵襲かつ低リスクで治療をすることを可能としたのがTAVIです。

手術方法としては、足の付け根や、鎖骨の下、心尖部等からカテーテル(治療の管)を用いて小さな穴より劣化した弁の代わりに新しい人工弁(生体弁)を留置してくるという治療です。

もともと手術ハイリスクの患者様に対して始まったTAVI治療でありますが、2019年7月の段階で日本での手術死亡率(30日死亡率)は1.3%と従来の外科手術と比較しても優位性がある成績となっております。

しかし、良いことばかりではありません。特有の合併症としては、心臓の電気の流れに影響することで、ペースメーカー植え込み術を要することが約10%程度の可能性であります。しかしながら、最短で術後3-4日での退院も可能であり、非常に体の負担の少ない治療です。

岐阜ハートセンターでは2020年3月現在、TAVI手術死亡率0%、ペースメーカー植え込み率4.9%と全国平均と比較しても非常に良好な治療成績であります。2019年には、従来の生体弁の劣化による大動脈弁狭窄や逆流に対してもTAVI治療が実施できるようになり、より体に負担のない治療を選択可能となりました。

しかしながら、大動脈弁狭窄症の患者様すべてにTAVI治療が出来るわけではありません。患者様の弁の状態や全身状態によっては、外科的な開胸手術のほうが安全で確実な場合もあります。岐阜ハートセンターのTAVI外来では、心臓超音波検査やCT検査などできっちりと評価を行いどの治療法がその患者様にとってベストかを判断しています。

https://gifu-heart-center.jp/outpatient_tavi/

本地洋一さん:最後に松尾院長に質問があります。岐阜ハートセンターは循環器疾患をお持ちの患者様に対して非常に高度な治療を行っていると認識しているのですが、受診するのに必ず紹介状が必要なのでしょうか?

松尾院長:いいえ、紹介状は特に必要ありませんし、紹介状がないと初診料が高くなるということもありません。岐阜ハートセンターを始めて受診される患者様の約半数の方は紹介状なしで来られていますよ!お電話でも外来の予約が出来ますので、心臓に関して不安をお持ちの方はいつでもお電話ください。

吉田早苗さん:次回のハート相談所は2021年12月2日(木)15:15からの放送になります。

また、心臓や循環器疾患に対する質問やご意見などは番組までドシドシとお寄せください。